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今月のテーマは“おともだち”。 ま、ひとくちに友達といってもいろいろありますが、まずこの「さかな1ぴきなまのまま」(フレーベル館、874円、(電)03・5395・6613)は佐野洋子のものでは私の一番好きな絵本です。 友達を探しに出かけたちび猫が、途中へびに「ぼくなんかどうです?」といわれたのにへびなんか、やだってお高くとまるんですよ。そのうえプライドの高〜い白猫のお嬢さんをいいな〜と思ったのに、むこうはアンタなんか……と鼻であしらうのね。で、ハッとしたちび猫はまじまじとへびを見、お友達になるんです。 晩ごはんに自分には焼いた魚……そして“さかな1ぴき、なまね!”(へびのぶんよ)とちび猫はおばあちゃんに誇らしげに叫ぶの。 「ねずみとくじら」(評論社、1200円、(電)03・3260・9409)は才人、ウィリアム・スタイグの作品――。一見地味ですが、あとからしみじみと切なくなってくる1冊です。 海に冒険しに出かけたねずみが波にさらわれ、溺(おぼ)れかけていたところをくじらが助け、親切にもねずみの故郷の海岸まで送っていくんですね。2人はなかよくなり、ねずみはなにかあったら恩返しする、というんですが、くじらはこんな小さいねずみだもの、ムリだよね、と内心思ってたんです。ところが何年もたって波にうちあげられてくじらが死にかけたのがねずみのいた海岸だった……。そうしてねずみは友達のゾウを連れてきて、無事くじらは海に帰れるわけですが、どんなになかよしでもねずみは海に住めないし、くじらも陸には住めない……。だから2人はこの先二度と再び会えないだろうけど、相手のことは忘れない……むこうも自分のことは決して忘れないだろうと思いながら別れるんです。 「サリーとライオン」(光村教育図書、1400円、(電)03・3779・0581)=写真=はとても古い絵本です。なにせ1931年作ですから――。でも日本では新刊です。 サリーはライオンの子、ハーバートを飼い、親友になるんですが、ハーバートは大きくなりすぎて牧場にやられてしまいます。そうしてハーバートがサリー恋しさに町へやってきて大騒ぎを起こすと、なんとサリーの両親はハーバートを殺すどころか、自分たちが牧場へ引っ越せばいいのだ、という結論を出し、全員幸福になるのです。この両親って、実力あるよね。 3冊とも4、5歳から読んであげられますが、中高生にも喜んでもらえるでしょう。
読売新聞2000/06/24
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