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海外旅行ブーム、日本企業の海外進出といった背景の中で、「外国」を舞台、素材にした作品が目立つようになりました。それらの多くは、旅行記風のもの(この場合は、大人の日本人旅行者と現地の子どもの交流を描いたものが多い)と、海外生活体験記風のもの(母親が書いたものが多いが、子ども自身がつづったものも見られる)に大別できるようです。 「緑色の休み時間」(三輪裕子)は、<広太のイギリス旅行>の副題が示すように、子どもの海外旅行を素材にして、外国の子どもの交流をドラマにしている点が異色。従来この種の作品が少なかった理由の一つには、言葉の障害があったと思いますが、この作品では、主人公の小学六年生の広太の一家が、二年前からイギリスに滞在している千里の一家を訪れ、この千里たちを仲介にしてイギリスの人々と出会う、という形をとっています。 ウェールズの豊かな自然とともに、広太が出会ったこの地方の"城"に住む少年ランダルの境遇を通して、この国の現在の問題もそれなりに顔を出しており、異国の風土、文化とまみえることの手触りが確かに感じられます。 「モザンビークから来た天使」(井口民樹)は、アフリカのモザンビークから、医師になるために日本にやってきた二人の少女を描いたノンフィクション。二人を連れてきたのは埼玉県の一人の女医で、国際医療活動の中でモザンビークの惨状に心を痛め、この国に医療を根付かせる一助としてこのことを思い立ったのです。とは言え、当時二人はまだ十三歳、こうした選択が二人にとって"幸せ"だったかどうかは議論の分かれるところでしょう。 しかし、二人のがんばりは、周りの日本人の子たちには確かに影響を与えます。また最初何も知らずに、モザンビークを苦しめている隣国南アフリカ共和国の旗で"歓迎"しようとして、二人に激しく拒絶され、アフリカの現状に初めて目を開かされる子のエピソードなど、大いに考えさせられます。 さて、こうした「国際化」がもっとドラスチックに起こっているのは中国のようで、現代中国の作品「フランスから来た転校生」(程*)には、その素材ともに、中国でこうした作品が出版されるようになったことに正直驚きました。 中国の大学で一年間講義をするために招かれたフランス人の教授。その十二歳の息子もこの大学の付属小学校に転校してきます。"問題"を起こさないようにと担任の若い女教師に言い含める校長。その次に優等生の女の子をフランス人の隣の席に決め、「フランス人が物をくれたら」「資本主義がいいといわれたら」などの"予備審問"を繰り返します。 「あの子がぞろぞろ」(高田桂子)は日本の中の引っ越しの話。京都に住むゆうすけの近所に、東京からの一家が越してきます。「よし、いじめたろ」と"決心"するゆうすけ。ところが何とこの家の子どもたちは四つ子だったのです。大人の思惑を飛び越えたところでの、出会いの苦さ、うれしさがここからも伝わってきます。(藤田のぼる) 「本のリスト」 緑色の休み時間―広太のイギリス旅行(三輪裕子作、いせひでこ絵、講談社) モザンビークからきた天使(井口民樹文、瀬野丘太郎絵、学習研究社) フランスから来た転校生(程ハン作、中田美子訳、依光隆絵、佑学社) あの子がぞろぞろ(高田桂子作、杉浦載茂絵、国土社)
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