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今月はアフリカにかかわる二冊の本を紹介する。意識したわけではないが、タイトルが『ピカピカ』と『ポレポレ』というのが面白い。アフリカが舞台、もしくはアフリカを素材にした作品は誠に少ない。それも、動物や自然が素材というのではなくて、現在のアフリカの人々の暮らしとかかわる作品は殊に少ない。この前文のところで具体的な作品名をあげるのは異例なことだが、僕が知っている範囲では『読んでおきたい6年生の読みもの』(学校図書)に収録されている短編『アフリカの角』(谷本美弥子)がソマリア内戦における親子の悲劇を描いた極めて感動的な作品で、一読をお薦めする。今回紹介する二冊は、より日常的な素材で、もっと年少の読者にも身近な思いで読んでもらえる作品といえる。特に『ピカピカ』の方は、読んであげれば幼稚園から可能だし、話の深め方によっては小学校高学年あたりの関心にも十分にこたえることができるだろう。 『ピカピカ』たばたせいいち・作(偕成社、一四○○円) 道端に捨てられた自転車のピカピカ、ゆきちゃんが修理の名人のげんじいちゃんの所に運んでくれたおかげで、すっかりきれいに生まれ変わる。そして、げんじいちゃんの計らいで、他の自転車たちと一緒に船に積まれ、アフリカを目指すことになる。アフリカに着いたピカピカは、助産婦のモシャおばさんの家にもらわれて、赤ちゃんの母親たちをはじめ村の人たちのために、フル回転で働くようになるのだ。こういう説明だと社会科的というかひどく平板な印象になってしまうが、擬人化されたピカピカの視点と、それを見守る作者の目とが見事に一体化された各場面のリアリティーに思わず引き込まれてしまう。とじ込みのリーフレットによれば、年間三千台の再生自転車が発展途上国に送られている由だが、そうした事実への賛同の思いを引き出すにとどまらない、絵本として第一級の作品といえよう。 『ポレポレ』西村まり子・作、はやしまり・絵(BL出版、一三○○円) 四年生の友樹のクラスに新学期と同時にアフリカからの転校生ピーターがやってくる。父親がケニア人、母親が日本人というピーターは日本語も大丈夫で、よくしゃべる男の子だった。そして、ピーターの影響で、クラスで「ポレポレ」という言葉がはやり出す。「ポレポレ」とは「ゆっくり、のんびり」といった意味で、遅刻してきた子がこの言葉で言い訳したり、何かでビリになった子にも「ポレポレ賞」が与えられたりするようになる。そして、ピーターは、クラスの女の子の間のいじめ解消にも一役買うことになる。文章の短さという制約もあってか、話の展開はややスムーズに過ぎる嫌いもあるが、独特の遠近感を生かした図柄が効果的で、ピーターとの出会いを受け止める友樹たちの心のありようが無理なく迫ってくる。「ニッサン童話と絵本のグランプリ」の受賞作品だが、こうしたタイプの作品の受賞はうれしい。 (ふじた・のぼる=児童文学評論家)(東京新聞1999.01.24) テキストファイル化山地寿恵 |
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