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この書評は、なにかしら共通項を持った二つの作品を並べて紹介するパターンになっており、これは結構気に入っているのだが、困る時もある。ぜひ紹介したい本があっても、それと並べる作品が見つからず、結果として紹介し損なうということが何度かあった。実は今回取り上げる「いちにちごっこ」も七月の発行で、危うくそうなりそうなところだったが、ようやく並べて紹介できそうなもう一冊の絵本と出合うことができた。ただ、この二冊の共通項を言葉にするのは難しく、 「小さな旅、大きな出合い」 としたが、ある意味ではそれはほとんどの物語に共通するテーマといえるかもしれない。 どちらも日常の時間からちょっとだけ飛び出した小さな冒険なのだが、それが深い出合いのドラマともなっており、最初は子どもに読んであげて、その後、子ども自身で楽しませてあげたいタイプの絵本だと思った。 『いちにちごっこ』 (あきやまただし作・絵、学研、1400円) 「みんなでおにごっこしてるごっこ」 で公園を駆け回る男の子。一人でかくれんぼしながらの 「まいごになっちゃったどうしようごっこ」 「ぼくはここだよー、だれかたすけてーごっこ」 、男の子の心情と 「ごっこ」 の境目がどんどん薄れていき、家に戻りながらの 「ぼくはひとりぼっちごっこ」 「ただいまごっこ」 のしょんぼりした姿。そして、ラストのドンデン返し。一見原色のようで、よく見るとなかなか深い味わいの色遣いが、男の子の心情を余すところなく表現しており、喜怒哀楽のすべてが一冊の中に凝縮されたようなうれしい絵本である。 『おばあちゃんにおみやげを』 (オニェフル作・写真、さくまゆみこ訳、偕成社、1200円) 「アフリカの数のお話」 という副題がついているように、舞台はアフリカのナイジェリア、エメカという少年の小さな旅が一から十までの数を追う形で描かれる。まずは 「男の子が一人」 、エメカのまっすぐな笑顔にひきつけられる。次のページには二人の友だちがこま回しをしている写真。隣村に住むおばあちゃんを訪ねるエメカは今日は遊べない。 次は市場に向かう三人のおばさんたち、途中で四本のほうきや、五人の子どもたちに会い、市場では六つの首飾りに目をひかれ、おばあちゃんに買ってあげたいなと思うエメカ……というふうに、エメカの足取りがアフリカの風物とともに語られていく。 シンプルな展開だが、その風物の一つひとつはおそらく選びぬかれたものであり、暮らしの息吹が写真の一枚一枚から無理なく伝わってくる。そしてラスト、エメカを迎える十人のいとこたちの笑顔。ちょっとした距離でも車に乗ってしまうことの多いわたしたちや日本の子どもたちが、どんなにたくさんのものを見逃しているか、そんなことも考えさせられる一冊だった。(ふじた・のぼる=児童文学評論家) 東京新聞2000.11.26 テキストファイル化武像聡子 |
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