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小中学校の学習指導要領が変更され、各科目で「総合学習」がキーワードになっている中で、児童書の世界、とりわけ、知識読み物や知識絵本の分野では、それに対応した、もしくはそれを意識した出版物が目立っている。 しかし、いかにも学校図書館向けのセットに仕立てたという印象が強いものが多く、一冊一冊に血の通った知識読み物、絵本というのは、必ずしも多くない。 そうした中で、ここで紹介する二冊には、その素材のユニークさや切り口の新しさはもとより、何よりも子ども読者と「知の楽しさ」を共有しようという姿勢が感じられ、貴重だと思った。 一人で読むのもいいが、子どもたち同士、大人と子どもで読み合いたい本でもある。 『太鼓』 (三宅郁子・文、中川洋典・絵、解放出版社、2200円) 「つくって知ろう! かわ・皮・革」シリーズ全5巻の一冊目(以下、続刊)。 楽器という側面から様々な太鼓を並べてみる、といった本はあったかもしれないが、太鼓の膜に張る革という素材を含め、その作り方からのアプローチというのはこれまでほとんどなかったのではないか。各地の祭りなどはむしろ活発化しているし、子どもの参加も奨励されているから、この素材は子どもたちにも結構興味深いと思う。 ここでは和太鼓を素材に、その構造、胴となる木の選び方、削られ方、主に牛が使われる皮のすき方、張り方などが絵(これがすばらしい)や写真入りで説明されていく。日本の祭りに欠かせない太鼓のメカニズムや歴史に、光が当てられたことはうれしい。 『台風のついせき 竜巻のついきゅう』 (かこさとし・作、小峰書店、1300円) 「かこさとし大自然のふしぎえほん」シリーズの一冊。今年は台風の多い年だから、タイムリーでもある。 この著者の強みは絵も図表も解説文も書けることで、台風の定義に始まり、その発生、進化のメカニズムが、一見子どもの自由研究のような親しみやすさの中で、かなり科学的に、ていねいに語られる。台風を地球規模の視点からとらえるその発想や、台風と竜巻とを比較して語るというのもユニークであり、シリーズタイトルの「大自然のふしぎ」の名に恥じない。 子どもの理科離れが話題になっているが、このシリーズなどは、その有効な歯止め役になるかもしれない。 (ふじた・のぼる=児童文学評論家) 東京新聞2001.09.23 テキストファイル化武像聡子 |
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