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このコーナーでは、福武書店の絵本ばかりではなく(たまには取り上げますが)色々な出版社から出ている本を少しずつ紹介していきたいと考えています。 今回は、『なんでもの木』(利渉重雄作・絵/佼成出版社)と『もこ もこもこ』(谷川俊太郎作・元永定正絵/文研出版)の二つ。 この二作は、ふつういわゆるストーリー絵本といわれているものとはちょっと違っています。『もこ もこもこ』は、谷川さんのことばと元永さんのアブストラクト風の絵が楽しいハーモニーをかもしだしていますが、いわゆる「誰がどこで何をした」的な文章は一切ありません。『なんでもの木』にいたっては、文字は、タイトルと奥付以外使われていません。 けれども二冊とも、ページをめくる毎に、その世界がどんどん広がっていくのです。 『なんでもの木』はまず、丘の上に、一本の木が生えているシーンからはじまります。ところがページをめくると、丘だと思っていたのは、実はゾウの背中。あれっと思って次のページをめくると、ゾウは大きなカメの背中にのっているのです。全部説明してしまうと本を開くたのしみがなくなってしまいますから、このくらいにしておきますが、この絵本の中には、文字通り宇宙がつまっています。本の中の宇宙、一本の木、一個の生命体に宿る宇宙が。 たった二色刷りのペン画で、これ程大きな世界を表現できるものか、と、この本をはじめて見た時にはとても驚きました。友人達に見せるとみんな必ず、この本を買いに本屋さんへ出向くというのも面白い事です。多少大人っぽい本かもしれません。でも、ページを開く面白さを上手に使った、楽しい絵本であることに変わりはありません。 さて、『もこ もこもこ』。文研出版のこのシリーズには、長新太さんの『キャベツくん』や、今江祥智さんと杉浦範茂さんの『そこがちょっとちがうんだ』等々、なかなかすごい作品がそろっていますが、この、『もこ もこもこ』は、他のどこにもないような不思議な作品です。この本には、とびらも、見返しもありません。表紙をあけると、すぐ第一シーン。不思議な空気の中、しーんという言葉のみが書いてあり、次のページでは、「もこ」と、地面(?)がふくらみます。これもぜひ手にとってみてほしい。できれば本屋さんで。なぜなら、この本はカバーのそでにかくれた部分に秘密があるのに、図書館ではそれをテープでとめてあることが多いからです。一度子どもに読んであげたら「キャーッ」と言って喜びましたっけ。やわらかな感性に共鳴するやわらかな絵本とでもいえるでしょうか。本当にこの世界に入りたかったら、ぜひ、誰かに読んでもらってください。耳で「ことば」を聞きながら絵を見てると、楽しさが倍になりますよ。
テキストファイル化富田真珠子
福武書店「子どもの本通信」第2号 1988.6.20 |
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