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乾電池で動くGB(ゲームボーイ)のコンセプトは、持ち歩いて遊べること。だから、阪神・淡路大震災の時、任天堂はTVのない被災地の子どもたちに5000台を配布したわけです。携帯型ゲーム機。ただ単にそれだけのはずが、GBにはもう一つの機能がありました。ケーブルによるデータのやりとりです。友達のGBとつないで、対戦型ゲームができる。しかしそこまででは、一つのゲームを2台でプレイするにすぎません。同時体験、体験の共有だけです。そこに互いの情報の交換、つまりコミュニケーションを成立させたのが、1996年に発売された『ポケモン』。 旅をしながらモンスターを集めて図鑑を作っていくというシンプルなRPG。収集とは、自分で一つの世界を構築していき、王様になれる作業なので、いつの時代だって、好きな子どもは多い。が、『ポケモン』はそこに一つの仕掛けを用意していました。全く同じストーリーなのに出てくるモンスターが微妙に違う、赤と緑のソフトを作ったのです。総てのモンスターを収集し、王様(ポケモンマスターと呼んでいます)になるための道は二つだけ。両方を買うか、友達と赤・緑を別々に買い、捕まえたモンスターを交換すること。もちろんほとんどの子どもたちは後者を選択し、互いのデータ交換を始めました。これは、子ども同士のコミュニケーションなしには成立しないソフトと言ってもいいかもしれません。だから面倒なはずなのです。が、超大ヒットしたのは、単に収集だけが目的だったのではなく、互いの収集した情報(ここではモンスター)を見せ合い、必要なものは交換する楽しさを知ったのだと思います。発売から7年目、そろそろ引退の時期を迎えていたGBの、コミュニケーションツールとしての使い道が発見されたのです。逆に言えば、そうしたツールを子どもたちは必要とし、求めていたとも言えます。今ではモバイルでメールも可能となり、GBによるコミュニケーションは拡がりつつあるのですが、そこから生まれてくる新しい子どもライフはどんなものでしょう。 (ひこ・田中 「図書館の学校」2001.05) |
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