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今回はやはりファイナルファンタジー]の話を外すわけにはいかないでしょう。 発売二週目で二百万突破の大ヒット。正直に言えば、思ったより少ないほどです。ほぼ同時期に発売された「ハリーポッター3」の影響がでているのだと思います。 それでも七千円以上するソフトがそれだけ動くというのはとんでもないこと。 主人公たちは、RPGのお約束通り、モンスターとのバトルで強くなっていきます。パーティは男三人に女二人。男たちは攻撃力がどんどん成長していき、女の一人は回復魔法をたくさん覚え、もう一人は攻撃魔法が得意という、かなりコテコテのジェンダーバイアスが、相変わらずあります。 子どもたちは、プレイしながら知らず知らずにそれを学習してしまうわけです。 その辺りを気遣っているゲームが殆どないのは、最も新しいはずのこの業界が、男社会であるからです。古い業界は、古い故に叩かれて、「セクシュアル・ハラスメント防止マニュアル」までできています。にもかかわらず、新しい業界がそれをちっとも学んでいないのは、この国が本音のところでは、男社会をやめたくないよい証拠でしょう。 なのですが、それでもこのRPGには、興味深い点が多々あります。 男の子ティーダが一応主人公なのですが、彼は、すでに終わった物語を語っているという設定。つまり、新しい冒険ではなく、彼はその冒険から生き残ったことが最初から明らかなのです。元来RPGをプレイする子どもたちは、主人公を旅をともにし、世界を救う目的に向かって一心同体で、生死をかけながら進んでいくことに、RPGの醍醐味はあったはずが、ここにはそれがありません。小説世界では「物語の終わり」がささやかれて久しいですが、その兆候がRPGにも出てきたわけ。そして、今、ティーダが一応主人公と述べましたように、実は彼が語る物語の主人公は、彼ではなく、回復魔法の女の子ユウナなのです。ネタをあかせば、最後のボスは彼女がいれば簡単に倒せてします。 子どもプレイヤーが自分と同一視するティーダではない女の子が主人公の物語。「コテコテのジェンダーバイアス」があるソフトも実は内部で揺れているのです。 (ひこ・田中 「図書館の学校」2001.10) |
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