コドモの切り札


(14)

おとそ気分で・・・


甲木善久
           
         
         
         
         
         
         
         
     
 明けましておめでとうございます!
 というわけで、新年にふさわしい本を今日はご紹介することにする。
 なんたってこの作品、紅天女』(荻原規子・作/徳間書店)というタイトルからして、めでたい。「薄紅」である。おまけに「天女」なんである。装丁もピンクで華やかだし、いとうひろしのワケわかんない表紙絵もお屠蘇気分にフイットしたイイ感じである。
 それでもって内容も、豊葦原の瑞穂の国-古代日本を舞台としたファンタジーとくれば、これはもう、お正月にピッタりの本というしかない。しかも、物語は読み出したら止まらない面白さである。マンネリ気味のテレビ番組をダラダラと眺めているより、はるかに充実した時間を過ごせることは請け合おう。
 この作品、『空色勾玉』『白鳥異伝』(同)という二作品の続編である。だから、なるべくそっちから先に読んでおく方がいいのだが、しかし、読まないからといって面白みの減るような物語じゃないので、ご安心を。
 なんたって、二人の主人公、阿高と藤太の描かれ方が良い。実にカッコいいのである。双子のように育った彼らが、光と闇に引き裂かれ、数奇な運命をくぐり扱けていくさまは読みごたえがあるし、彼らに絡む皇女苑上、千種の二人の少女もステキである。
 物語の基本的な骨格となる天つ神と国つ神の戦いには、中央に位置する<正義>の、純粋なるがゆえのおぞましさが見事に表現され、と同時に、そのような状況でもなお生き扱いていこうとするコドモたちの生命力が輝きを増して描かれる。
 さて、最後にひとつ難をいえば、信頼すべき読書人である友人カンちゃんの弁である「物語が盛り上がってきたとこで、残りぺージの少なさが不安にさせる」ということだろう。面白過ぎて、もっと読ませろ! 状態になるのだネ。
西日本新聞1997,01,05