甲木善久
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『たまごっち母子手帳』(ワニブックス)を初めとして、「たまごっち」関係の本が売れている。そして、もちろん、「たまごっち」本体も大人気で、手に入れるのがメチャメチャ大変なのは皆さんご承知のとおりである。 さて、そうなると、「たまごっち」に対する批判なんていいうのも、当然のように出てきちゃう。〃良識ある大人〃って人たちは、自分に理解できない子供の文化現象が起きると、どうしたって悪と決めつけてかかる習性があるのである。だから、プリクラも、テレビゲームも、そして古くはマンガのときも、みんな同じパターンの繰り返し。 具体例を挙げると、「週刊文春」三月六日号一○九号の、ある弁護士さんのたまごっち批判など、その典型といっていい。これによれば、「実際にぺットを飼う場合は」「動物の死がいかに悲しいことかということを子供は痛感する」のだけれど、たまごっちは「命あるものの〃生死〃をゲームに」したから「死というもの」を「安直にとらえ」るようになる、ということらしい。しかも、今の子供達はビデオ世代だから「〃戻ること〃は簡単なわけで」、「実際は二度と生き返れないのに」生き返れると「錯覚」して、「だからいとも簡単に自殺する」と続く、そしてヘ結びに「こういうゲームによって本来の人間性を失っていく子供たち、そして馬鹿親たちに、強く強く警鐘を鳴らすべき」だ、と主張する。 正直いって、僕は読みながらア然とした。 人間の(それも特に子供の)感受性は、電子、電気機器の動きと本物の生命現象を混同するほど鈍くはない、いや逆に、そうした認識ができるのは、紋切り型の枠を通して世界と関わるこに充分に慣れた者である。もちろん、世間ではそういう人を良識ある大人と呼ぶ。 つまり、そういうわけで、的を外した批判が後をを断たないのだね。
西日本新聞1997,03,23
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