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昨日、ネタを仕込みに渋谷の書店まで出かけたら、そこでなんと、『プリズンホテル春』(浅田次郎・作/徳間書店)を見つけてしまった! 奥付けを見れば、一九九七年一月末発行。ということは、前回書いた「プリズンホテル三部作」というのは間違いで、正しくは四部作だったのだ。う、う、ゴメンなさい。 んで、さっそく買って、読んでみたのだが、先週、先々週とココで語ったことと食い違う内容ではなく、むしろ、それを保証してくれるようなものだったので、ホッとした。一作目にくらべれば、シチュエーションコメディー的な要素は影を潜めたものの、逆にその分、大きくなったコドモの傷ついた心を癒す物語の骨格が明らかになって、イイ感じである。 さて、前振りはこのくらいにして本題に入ろうか。昨日仕込んできた本をことごとく読み尽くして、ちよっと語ってみたくなったのは、ダイアナ・ウイン・ジョーンズの『魔法使いハウルと火の悪魔』 (西村醇子訳/徳間書店)という作品だ。 これは、若い娘が呪いによって九○歳の老婆にさせられちゃって大変な目に会う、というファンタジーなのだが、今日的な女性の姿が濃厚に映し出された物語に見える。 徹底的に昔話風の舞台設定でありながら、しかし、この主人公は自らの自由を自らの力でつかみ取らねばならない。さらに、老婆の目でハンサムな魔法使いの生活の実際をつぶさに眺め、その上で「末永く幸せに暮す」結末を選ぶのである。 しかも、その後には、「いっしよに暮らすとなれば、何事もなく幸せに暮すおとぎ話とは大違い、もっと波乱に満ちた暮しになることでしよう」なんてことが書かれ、結婚はゴールじゃないよ、とサラリと語るあたり、実に大したもんである。 今日、結婚式を挙げる友人に贈ることにしようかな?
西日本新聞1997.06.15
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