コドモの切り札

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感想文のやっつけ方

甲木善久
           
         
         
         
         
         
         
     
 丸谷才一氏も、『日本語相談一』(朝日新聞社)の中で子供に読書感想文を書かせるな」と主張している。そうして、その理由のひとつとして「優れた読書感想文がすくないのは当然で、あれは一種の書評ないし文芸評論なのだから、子供、にはなかなか書けない」と語っているのだが、もちろん、確かに、その通りなんである。
 とはいえ、か弱い生徒の立場、宿題は宿題として、休み明けにはどうしても提出しないわけにはいかないのが、ツライところ。というわけで今回は、評論家の端くれとレて、読書感想文のクリアの仕方を教えよう。
 まず、ある程度柔軟な考え方をしてくれる担任なら、先週の僕のコラムを写して提出するのもひとつの手かも? そのとき大切なのは、初めに「読書感想文を書こうと思っても、なかなかうまく書けないで困っていたら、西日本新聞のコラムに私の考えと似たようなことが書いてあったので、それを引用します」と書いておくこと。
 そして、次の行の四マス目から写し始め、あとは上のニマスをずっと空けたまま写し続ける。最後に、三マス下げて(一九九七年八月十七日西日本新聞)と書き、さらに「この文章を読んで、先生はどう思われますか」と添えれば完壁である。
 が、そうもいかないだろうから、まじめなアドバイスもしておこう。
 重要なのは本選び。近所の図書館に行ってカウンターの人に自分の好みを伝え、本を教えてもらおう。で、もしか二十ぺージぐらい読んでもツマんなかったら、すぐに止めていい。気にいった本でなければ、感想を書くのは難しいのだ。
 そして、面白い本に出会えたら、今度は好きな場面をメモしておいて、どうしてそこが好きなのか考えてみよう。考えがまとまったら原縞用紙に向かい、だいたいどんな本なのか書いたあとで、こんな場面があって、どうして面白いと思うのかを書いていく。最後に、声に出して読み返し、変なところを直せば命完成。じゃ、頑張ってね。
西日本新聞1997.08.24