コドモの切り札

66
おめでたい話


甲木善久


           
         
         
         
         
         
         
     
 いよいよ今日から読書面も再開ということで、今年もまた、よろしくご愛読のほどお願いいたします!
 といいつつ、いきなり本題に入ってしまうと、佐藤多佳子『しゃべれども しゃべれども』(新潮社)なんである。実は、これを今年初めのネタにしようというのは、昨年初秋に出版され、読んだときから決めていた。イヤもちろん、すぐに書こうかとも思ったのだが、「吉田秋生・ジェンダー・セクシュアリティー」ネタが長くかかりそうだったし、『しゃべれどもー』はすごくおもしろい小説だったけど地味な出版のされ方だったから、誰かに先を越されることはなかろうとも思ったし、おまけに、この本の表紙が和服を着た男女が見つめ合ってる、いい感じのイラストで正月らしいとも思ったし、そんなこんなで、新年用にストックしていたのだな。
 ところが、である。なんと、この本、かの有名な『本の雑誌』の年間ベストワンに選ばれてしまった! う〜む、これでその後取り上げたら、なんか後追いしたみたいじゃないか…。いやはや、しかし、さすがに「異常的連続性専心一途的終日ひたすら本読み人生」「真性活字中毒者」である目黒考二氏が発行人となり、椎名誠氏が編集長を務める『本の雑誌』、地味な出版だろうが何だろうが見るところは見ているものだと、改めて感心してしまう。ついでにいっておくと、この雑誌のできた経緯については『本の雑誌風録』(椎名誠/朝日新聞社)をご覧あれ。多くの驚くべき読書好き達が、如何ようにしてあの濃密な『本の雑誌』を産み出してしまったかがよくわかる。
 いやはや、それにしても、佐藤さんにはメデタイことだ。彼女とは学生時代からの友達だから、つい一緒に喜んじゃう。あの雑誌のベストワンに選ばれるのは芥川賞候補になるより名誉なことだもんね(直木賞なら別だけど)。
 あっ…、新年早々またやってしまった。内容については次回!
西日本新聞1998/01/11

テキストファイル化 妹尾良子