甲木善久
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これまで、当コラムでも二回ほど書かせていただいたが、僕は「季刊ぱろる」(パロル舎)という雑誌の編集長だった。「だった」というのはつまり、この度その任から解かれて、ただの関係者になったわけである。 ご存知ない方のために申し上げておくと、「季刊ぱろる」というのは、今から三年前、子どもの本の状況の閉塞感を何とかしようと、作家の舟崎克彦と木村裕一、児童文学研究者であり翻訳者の神宮輝夫、評論家の野上暁、編集者の八木一樹と始めた雑誌である。で、今だからいっちゃうと、初めは同人誌として計画していたものなのだ。 ところが、世の中には奇特な出版社もあるもので、パロル舎から「よーござんす。ウチで面倒見させてもらいましょう」と申し出があり、アレヨアレヨという間に商業出版のベースでやることになってしまった。 だから、編集長というのも何のことはない、当初の同人誌計画での「甲木君が一番若いから編集長(雑用係)」的発想がそのままスライドしてしまっただけである。しかも、僕の場合、プロの物書きではあっても、編集は全くの素人だ。商業出版ベースの編集作業の舵取りは難しく、しかし、周囲の人々のあたたかい助力に支えられながら、やっとこ八号までは出してきた、というのが本音である。そして、その結果、昨年末に休刊した。 だが、この「休刊」は廃刊の婉曲表現でないのである。購読者もおかげさまで増え、雑誌への期待も高まってきた今だからこそ、キチンとした商業出版の足場を固め直す必要を感じたのだ。 今秋、「ぱろる」は第二期のスタートを切る。これまで編集実務を担当していたパロル舎の中西洋太郎さんが新たに編集長となり、ハード面を充実させた上で、子どもと本を取り巻く状況に言論の場を立ち上げる。 僕も重責から解放されて、本業の物書きとして伸び伸び書かせてもらうつもりだから、ぜひ、楽しみにしていてほしい。
西日本新聞1998,03,01
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