甲木善久
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『みんなのマンガ '98コミックランキング』(村上知彦監修 / 毎日新聞社)が面白かった。 まず、そのコンセプトがグッとくる。監修者である村上知彦の言葉によれば、このムックは「固定ファン以外にももっと広く読まれてよいマンガがたくさんあるのに、読者層を絞り込み細分化したマンガ雑誌や、ビニールパックされて書店で内容を確かめにくい単行本や、充分に機能しているとはいえない批評などのせいで、見えなくなってしまっている」マンガへのガイドブックとして、「いずれ劣らぬ目利き三十一氏による大人のベストテンを目指し」「読者のマンガ選びのための、手がかりとなれ」るよう作られたという。 確かに、『 '97できるマンガランキング!』の選考委員には、いしかわじゅん、大森望、香山リカ、北村想、竹内オサム、夢枕獏、四方田犬彦などなど実に多彩なメンバーが名を連ね、彼らが選んだランキング表と、作品への評は実に明瞭である。 また、他にも好企画がめじろ押しで、例えば、マンガ雑誌相関図や、売れ筋マンガ文庫一覧など、これまで知ってはいたけれど本当は良くわかんなかったことを明らかにしてくれるんである。確かにコンセプトどおり!実に優れたガイドブックなのだ。 さて、突然話は変わるのだが、このムックを見ながら、つい考えてしまったことがある。そう、「こういう企画って、子どもの本でも立てられるのかな?」ということだ。マーケットがミニマムであることは取りあえず描くとしても、読者層を学年表示などによって絞り込み細分化していることや、固定ファン(?)以外にももっと広く読まれてよい本があることや、不充分な批評が横行してることは子どもの本も同じである。けれど、こんなガイドブックを作ろうと思ったとき、はたして、人にせよ作品にせよ、現在の子どもの本の世界はそれを提供できるんだろうか? 昨年秋の「ユリイカ」児童文学特集では「カナリ終わってる」って感じがしたんだけど・・・。
西日本新聞1998,03,08
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