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◆『アレックスとゆうれいたち』(エヴァ・イボットソン作 野沢佳織訳 高橋由為子徳間書店 1999) 別に夏だからってわけでなく、幽霊の出てくるお話です。 スコットランド。先祖代々のお城を相続したアレックス。12歳の城主です。お金がなくなったこともあって、城を売却することに。買い手決まったのはアメリカの大金持ち。たった一つの条件は、病弱の娘が驚くといけないので、お化けが住んでいないこと。 はい、もちろん住んでます。アレックスを赤ん坊の頃から可愛がっている4人と1匹が・・・。 といった、おかしく楽しい設定で物語は始まります。 展開はもう、読者の望むところを外すことなく、ドタバタと。 テーマがどうの描き方がどうだのはパス。お好きな姿勢で読んでくださいませ(私は寝転がってよみました) ◆『永い夜』(ミシェル・レミュー 森絵都 講談社 1996/1999) おやすみのキスをママにして、ベッドに入る「わたし」。眠れない夜。「永遠」から「わたしの将来」、人類の意味。様々な問い・疑問を思い浮かべる「わたし」。「永い夜」。 そんな彼女に唯一しっかり生身の感触を与えてくれるのは愛犬のフィド。フィドはいつも自信があるように見える。 寝付けない時、考えた色んなこと。知りたい欲望。そうした想いが蘇ってきました。 造りはモノクロのペン画に、問い、というシンプルな見開き。分厚いです。そりゃそうだ。『永い夜』だから。 ◆『ワニニンのとくべつな一日』絵本(曽我舞/理論社 1999) ヒョーコ、サルノスケ、カバミと一緒にワニニンがカッパがふちにピクニックに行くお話。 彼らの名前から、彼らがどんな動物かは誰でもわかります。小説だとこれはたまりませんが、絵本という短いストーリーでは、巧く行くときは行くんだよね。 カッパに本当に会ったらどうしよう? でも怖がるのは恥ずかしいし・・・・。 オチは凝らず、一ひねりだけ。これくらいのほうが、「友情」が小さな子どもにもよく伝わるでしょうね。 ◆『マックスのどろぼう修行』(斉藤洋・作 おぼまこと・絵 理論社 1999) 「シュラムシュッテクベルグ盗賊団」の跡取りマックス。ところが鍵開けなんぞの盗賊の基本が全くだめ。そこで、修行にでることとなるのですが・・。 常に平均値より少し上の、安定感のあるストーリを提供する斉藤の最新作。今回も、安心して読み飛ばせ(これ、いい意味よ)ます。 修行には、色々掟があるのですが、それを守っていてはとてもマックスは修行を貫徹できぬだろうと、父親や祖父が、へ理屈で掟破りえをしようとしたりがおもしろい。お金は持盗んではいけないのですが、なんとか金貨を持たせようと苦労したりね。 そう、このストーリー「へ理屈」を楽しむのもいいです。 例えば、修行ではお宝を盗んでこなくてはいけない。やっと「竜の涙」と呼ばれる水晶を手に入れるが、捕まるマックス。盗んだ理由を訊いたあと、男爵はこう言います。 「『騎士道入門』には、『竜の涙を手に入れぬかぎり、一人前とは言えぬ』とは書いてあるが、『竜の涙をずっと持っていないかぎり』とは書いてない。考えてみれば、手に入れれば、それで役目はすんだことになる。だから、おまえが一人前になるために、どうしても必要なら、これを持っていっていい」 なんだか法律の解釈みたいですね。 ◆『モーリッツと空とぶ船』絵本(ディーテル・ヴィースミュラー作・絵 徳間書店 1988/1999) これ、奥付に「この日本語版の文章は、著者・原出版社と協議の上、徳間書店児童書編集部で作成しました」とあります。どういうことかといえば、絵はとてもいいのに、付いているストーリーがイマイチよく解らないので、駄目元で、新しい物語を徳間の編集部で創って、作者に見せたら、それでもいいとのことで、こうなった模様。 絵は、確かに幻想的で、面白いもの。「幻想的」といってもこの世の物でない美しさ、などというのでなく、現実をちょっとズラした風景とでも言えばいいのかな。 レンガ建てのビルの夜の屋上、エントツに碇を降ろして、帆船が屋上にいるモーリッツの元にやってくる。屋根の上には、怪しげな黒猫。帆船には、羽根飾り帽子を被ったオオム、チョッチ姿のネズミ、そして女の子。どうやら、モーリッツを夜に誘いだそうとしているようです・・・。 「冒険」の予感。 ◆『うみを あげるよ』絵本(山下明生・作 村上勉・絵 偕成社 1999) 山下明生の海の絵本シリーズ最新作。ベランダに干していたワタルくんの青いバスタオルが風に飛ばされてしまった。あれはワタルくんのあかちゃんのころから大切なもの。つまり、「ライナスの毛布」。ワタルくんんはおかあさんと、青いバスタオルを探しに行くのですが・・・。 青いバスタオルを彼がどう必要としなくなるか、という成長物語。 村上勉の絵にちょっと負けているかな。 ◆『くまのオルソン』絵本(ラスカル文 マリオ・ラモ絵 堀内紅子訳 徳間書店 1993/1999) オルソンは力持ちなんだよね。で、強いから、遊びのつもりでもシカの角を折ってしまったりで、いつのまにかひとりぼっち。冬眠の支度をするときだけ、少し幸せになる。だって眠れば何にも考えずにすむから。 すごく孤独。 そんなある日、コグマのぬいぐるみを見つけたオルソンは、彼を友達にする。いつかきっと生きているクマになると信じて。 水彩の絵が、いい。オルソンの表情を眺めているだけで、こっちも孤独になったり幸せになったりします。 最後はどうなるか、ですって? もちろん、あなたが期待しているように。 ◆『がぶり もぐもぐ』絵本(ミック・マニング&ブリタ・グランストローム 藤田千枝訳 岩波書店 1997/1999) 「かがくとなかよし」シリーズの一冊。 ということは、「かがく」を教えるんだな。って目で見ちゃおもしろくない。 普通の創作絵本として見て下さいな。 あるばん、土の中から一本の芽がでて、「ちいさな め たべたいのはだれかな」とキャプション。で、次のページを開くとイモムシが食べている。そして、また「イモムシ たべたいのはだれかな」とある。 もちろんだから食物連鎖の「かがく」なんだけど、次から次ぎへと、ページを繰るたびに食った生き物が食われていくのは、迫力満点。 わ、解りやすすぎる! これで絵がちゃんとオリジナルティ溢れるものなら、傑作! でも絵はいかにも「かがくとなかよし」なんだね。 残念。 ◆『イチジクの木の下で・ハリネズミのプルプル2』(二宮由紀子・作 あべ弘士・絵 文渓堂 1999) 絶好調、二宮由紀子が早くも『ハリネズミのプルプル』シリーズの2をリリース。何でもかんでもすぐに忘れてしまうハリネズミたち。で、今回は、プルプルのおとうさんがやってくる。何でも旅にでていたそうな。なんで旅に出ていたかとゆーと、用事で家を 出たのはいいが何の用事かも帰り道も忘れて、旅していたそうな。けれど、恋の道ばかりは別らしく、旅路で出会った黄色いハリネズミをちゃんと覚えていて、彼女と再婚したいとのこと。そこでプルプル、彼女におとうさんの思いを伝える用事に出かけるのですが・・・。 なごむなー。こーゆー話。あべ弘士とのコンビもピタリ。 ◆『にぎやかなおけいこ/ごきげんなすてご 3 』(いとうひろし徳間書店 1999) こちらも、ずっと絶好調、いとうひろしの『ごきげんなすてご』シリーズ3作目。 最初おさるさんだった弟ももう8ヶ月。「わたし」のけらいとなりました。ある日友達が連れているペットの犬が「けっとうしょ」付きで、芸もできるというから、「わたし」もけらいに芸を仕込むことに・・・。 子どもの呼吸を、ほんとうにこの作家はよく知っています。それは彼が「子ども心」を失わず持っているからだ、というでなく、それよりたぶん、子ども(自分自身の中のも含め)を見つめる冷静な視線にあると思います。 ◆『ちいさくなったパパ』(ウルフ・スタルク作 菱木晃子訳はたこうしろう絵 小峰書店 1994/1999) 父と息子を描かせたらピカイチのスタルク。今回は、子ども心を取り戻したいと思ったら、朝、ホントに息子と同い年になってしまったパパのお話。パパだと気づかない息子と友達になったパパ子ども。 これ、子どもの本というより、むしろ大人の願望ストーリー。 短い話を、はたこうしろうの絵は、コミックのように仕立てていて、なんだか、スタルクの短編は彼の絵がぴったり! という雰囲気になってきました。 |
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