徳間のゴホン!
第19回「『たまご』の中には何がある?」


           
         
         
         
         
         
         
    

 今回は「たまご」をめぐる本をご紹介します。たまごは子どもも大人も大好きな食材であると同時に、形自体も愛らしい存在。最近では「チョコエッグ」なる、たまご形チョコの中にオモチャのカプセルが入っているお菓子が巷で大ウケ。中身のコレクション性もさることながら、殻を破って中を見るというワクワク感が、子どもだけでなく大人の心も掴んだのかも。そんな愛されるたまごが出てくる本の一冊目は児童文学『レオ王子とちいさなドラゴン』。イースターのお休みに王さまたちが静養に出かけ、お城の留守はレオ王子に任されます。そんな時、お城の庭で大きなみどり色のたまごが発見され、お城中が「危険なドラゴンのたまごだ」と騒然。将軍は「こわす」、料理長は「大きな目玉焼きに」と意見が分かれる中、王子はこっそりたまごを温めることにしますが…? たまごを守る王子と大人たちとのやりとりが愉快な作品。イースター(復活祭)とはキリストが死後三日目にして復活したことを祝い、復活の象徴のたまごを食べたり、ペインティングしたまごを贈りあうキリスト教圏の春のお祭り。たまごへの装飾は、二千年前にキリストが登場するよりさらに昔から続いていて、人々は「大きな力がたまごに宿る」と信じていたそう。そんな古くからたまごは、長い冬の束縛からこの世を解放し、新しい希望、生活、繁栄を約束する「生命の始まり」の象徴だったようです。次にご紹介する絵本『おひさまのたまご』でも、やはりたまごは注目の的。北欧の森の中を探検していた妖精が、大きくてだいだいいろの丸いものを見つけ「おひさまがたまごを落としちゃったんだわ!」と大騒ぎ。渡り鳥からたまごの正体がオレンジだと教えてもらい、やっと安心した妖精は、森の仲間と美味しいジュースを飲み始めますが今度はそこへ、いやしんぼのカラスがやってきてしまい…? たまごをめぐる騒動が愛らしい絵で描かれ、とてもユーモラス。暗い森の中で光る明るいオレンジ色が、生命力の源・太陽を象徴し、光への愛情が伝わってきます。最後はたまごを探す絵本『きょうりゅうのたまご』。ある朝「ぼく」の部屋に遠い昔になくしたたまごを探して、きょうりゅうがやってきます。一緒に街のあちこちを探しますが、たまごはどこにも見当たりません。そこでぼくは、大好きな工事現場へきょうりゅうを案内して…? シャベルカーが大好きな強くてやさしいぼくと、大きなきょうりゅうかあさんの冒険物語。そしてついに見つけた、たまごの中には何がある? その中には生命そのもの、ちっちゃな赤ちゃんきょうりゅうが、にっこり入っていましたよ。(飯島智恵)

『レオ王子とちいさなドラゴン』ノルベルト・ランダ作/クローディア・ド・ヴェック絵/若松宣子訳
『おひさまのたまご』エルサ・ベスコフ作、絵/石井登志子訳
『きょうりゅうのたまご』中川千尋作、絵

徳間書店子どもの本だより2001.09/10
テキストファイル化富田真珠子