徳間のゴホン!第20回

おばあちゃんはマイペース

           
         
         
         
         
         
         
    
 ヤンのおばあちゃんはいつも元気で、ローラースケートで買い物に行ったり、暴れ牛をこうもり傘で撃退したり、ヤンの友達が溺れた時には、さっと助けてくれたりします。おまけに、「元気さ」だけではなく、おばあちゃんには長く生きてきただけの知恵もあります。ヤンが家出する、というと、おばあちゃんは止めはせず、「私も行くよ」とついてきて、ヤンがいろいろな目にあって疲れたてきたころに、さらりと「一度家に帰ろうか」といいます。可愛がっていた子ザルの病気が悪くなり、子どもたちがみんな泣き出すと、「泣いたってなんの役にもたちませんよ…みんな、何かちゃんとしたことをしましょ」といって、子どもたちそれぞれに、年齢に合ったお手伝いを言いつけます…。『うちのおばあちゃん』に登場するこのおばあちゃんの魅力は、彼女が「おばあちゃんらしいおばあちゃん」になろうと思っていないのはもちろんのこと、「賢く強いスーパーおばあちゃん」であろうとがんばっている、というわけでもないところ。あくまで自然体、自分のやりたいように、楽しみながらのびのびと孫たちと接しているので、孫たちもおばあちゃんが大好きなのです。
 一方、『エマおばあちゃん』に登場するおばあちゃんは、子どもや孫たちが離れて行って一人になったとき、初めて「白分のやりたいこと」を見つけました。子ども達がくれた故郷の村の絵を見て、「あたしのおぼえている村とは違う」と思ったのがきっかけで、自分で絵を描き始めたのです。初めは子ども達が来るたびに、もらった絵を飾り直したりしていたのですが、やがてそんな気兼ねもやめて、ひたすら描きたい絵を描き続けるようになりました。最後の場面で、何百枚もの絵に囲まれたおばあちゃんは、本当に満足そうです。
 どうも、「おじいちゃん」が登場する物語や絵本が、重々しかったり悲しかったり長い人生を感じさせたり(もちろん、その中にいいお話もたくさんあるのですが…)するのにくらべ、「おばあちゃん」たちはあっけらかんとしてマイペース。『そらへのぼったおばあさん』のおばあさんは、七歳のときに心に抱いた「星とダンスしたい」という願いを、百七歳になって見事にかなえますし、『おすのつぼにすんでいたおばあさん』のおばあさんは、魚の王様を助けてお礼をもらったのに味をしめ、「あれも、これも」と、ほしいものをぜーんぶ頼んでしまいます。(もちろん、そのあとばちがあたって、もとの貧しい「おすのつぼ」そっくりの小屋に逆戻りすることになるのですが、おばあさんはかえってさばさばしているようです。)
 こんなマイペースなおばあちゃんの本ばかり集まる理由は、1.おばあちゃんとはそういうものである 2.作者たち自身がそういうおばあちゃんだからだ 3.編集部の好みで、そういうおばあちゃんの本ばかり集めている…さて、どれでしょう?(上村令

児童文学
『うちのおばあちゃん』イルゼ・クレーベルガー作/八ンス・べーレンス挿絵/齋藤尚子訳
『おすのつぼにすんでいたおばあさん』ルーマー・ゴッデン文/中川干尋訳・絵
絵本
『エマおばあちゃん』ウエンディ・ケッセルマン文/バーバラ・クーニー絵/もきかずこ訳
『そらへのぽったおぱあさん』サイモン・パトック文/アリソン・ジェイ絵/矢川澄子訳

徳間書店子どもの本だより2001.11/12
テキストファイル化富田真珠子