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大切な家族や、大好きなペットとの別れを迎えた子どもたち。つらい体験を乗り越えていく姿を、丹念に描いた本をご紹介します。 『バーニー、いつまでもいっしょだよ』。幼い頃から何をするにも一緒だった愛猫バー二ーを、突然の事故で失った少女ソーニャ。泣き続ける彼女を囲んで、家族が小さなソファーにぎゅうぎゅうづめに座る場面からは、家族の寄り添う温かな体温が、本を持つ手に伝わってくるような気さえします。やがて新しい子猫を飼ってからも、バーニーの好きだった場所をいつまでもとっておくソーニャ。この本の冒頭に「かなしいときには、じぶんのこころのなかをのぞいてごらんなさい。たのしかったときのことをおもいだしてないているのだということに、きがつくでしょう」とあるように、このお話は決して悲しみを主題にしているのでなく「幸せだったことを思い出して…」と読む人に語りかけています。 同じく幸せな日々を思い出してこれからも精一杯生きようという気持ちが沸きおこる絵本に『ずーっとずっとだいすきだよ』(評論社刊)。『バーニー…』と違うのは、その別れが突然でなく、だんだんと少年の愛犬が老いてゆくところ。愛犬エルフィーの死に、家族が悲しみに暮れるなか、少年の心には救いがありました。それは、エルフィーに「ずっとずっとだいすきだよ」と毎晩言ってあげていたこと。愛するものに対して(それが人間であっても動物であっても)、心をこめて自分の気持ちを伝えることができていれば、「死」は決して子どもの心を壊すものではないと、この本は教えてくれます。 『ぼく、もうなかないよ』では、愛する気持ちを、毎日「お話」に託して伝えてくれたカバのおばあさんと小さなさるに「死」という別れが訪れます。それ以来、さるの笑顔は消えてしまいますが、おはあさんがしてくれたお話をほかの仲間に話してあげることで、さるは明るい笑顔を取り戻します。「お話」の持つ生命力によって、悲しみを乗り越えていく姿が心に響く一冊。 『さよなら、ママ』は、十三歳の少女の日記を通して語られる物語。(ママが最期に言った「さようなら」は「いつかどこかでまた会える」という約束の言葉だ…)と書かれたぺージには、「死」を封印せずに「生」の一部と受け止めることができた少女の、明日への希望がしっかりと宿っています。 そして今年4月の新刊『〈ナイナイ〉としあわせの庭』。愛するママを失い、以前とすっかり変わってしまったパパと、パパを想う娘のリラが再び心を通わせるまでを描く、心癒される物語をお贈りします。 子どもにとっても大人にとっても、本はいっもそばにいてくれる大切な友だち。悲しいとき、苦しいとき、本と気持ちを分かちあうことができれば、素晴らしいですね。(飯島智恵) 徳間書店「子どもの本だより」2002.3-4 より テキストファイル化富田真珠子 |
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