「あかてぬぐいのおくさんと7人のなかま」イ・ヨンギョン/文・絵 かみやにじ/訳
今回はおとなり韓国の絵本をご紹介したいと思います。
針仕事の上手な、頭に赤いてぬぐいをかぶっている奥さんと、七つの道具の精のお話。
ある日奥さんがねむったすきに、「奥さんがお針が上手なのは私がいるからよ。」と、物指し婦人が自慢をはじめ、それを聞いたはさみお嬢さん、針むすめ、指ぬきおばあちゃん等が次々に、自分が一番大切だと言い争いをはじめます。その騒ぎで目を覚ました奥さんは「一番えらいのはこの私だよ…。」と怒りますが、本当にいちばん大切だったものは…。
作者は韓国の人。韓国の古い物語を題材にした創作でありながら、昔話の要素いっぱいの骨太で魅力あふれる作品です。古からの人の営みの中で人とそれを扱う道具を共存者と捉え、見ている子どもたち、聴いている子どもたちが、知らず知らずに人間の知恵、たすけあう心にふれるそんな絵本。
韓国の家の様子や生活が色彩よく描かれています。表紙の内側の一枚絵には七人の精が描かれ、それぞれの精が自慢する場面は文章の上にその道具の絵が描かれていて、心憎いばかりの気配り。おもて表紙とうら表紙も思わぬ仕かけになっています。
登場人物が生き生きとして、大きな画面いっぱいに横になって寝ている奥さんと、ちょこまか動く小さな道具の精との対比がまた面白く、道具の精や奥さんの表情を追いかけているうちに、その表情が動きが、ストーリーを進めてゆきます。
本も大きめで絵がはっきりしているので、お話し会にも向いています。七つの道具の名称が、今の子どもには馴染みがないものも有りますが、お話をすすめてゆくうちに理解できると思いますので改めて説明する必要はないでしょう。
安心して勧められる絵本の出版が少ない中、一見地味だからなおさら紹介しておきたいと思います。
ほかに昨年出版された韓国のお話として次の五冊を挙げておきましょう。
「おどりのすきなとら」かんこく・ちょうせんのみんわ 松谷みよ子/作 井上洋介/絵
「おばけのトッカビと朝鮮人参」かんこく・ちょうせんのみんわ 水谷章三/作 村上豊/絵
「ノルブとフンブ」韓国民話絵本1 リュウ・チェスウ/作・画 田島伸二/文・監修
「牛になった寝太郎」韓国民話絵本2 ホン・ソンチャン/作・画 田島伸二/文・監修
「ウサギとカメ」韓国民話絵本3 パック・セホ/作・画 田島伸二/文・監修