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魔法使いのお話というのは、それだけで手をのばす子どもが多い。少しずつ長い話も読めるようになった三年生くらいの子どもたちには、特に支持される。魔法使いの本を読んでいるうちに長い本も読めるようになったと言うこともできる。本の世界への入り口として、〈すがたは人間と同じなのに実は魔法の力をもっている〉という魔法使いは、その橋渡しとして偉大な力を発揮してくれるようだ。 『魔女からの贈り物』は始まりがいい。嵐の日、男の子はおじいさんから「こんな天気の悪い日に、魔女は現れるんだ。自分のネコがいなくなって、かわりのネコをつかまえにくるんだよ。」と言われる。ネコを飼っている男の子は心配して「魔女を見分ける方法は?」と聞く。すると「魔女の涙は水晶になるんだ。ただし、魔女はめったに涙を流さないがね。」と言われる。嵐はますますひどくなり、時計なおしに遠くに出かけたまま、おとうさんの連絡がとだえた。そして、黒に身をつつんだおばあさんがやってくる。 これだけ魅力的なものが散りばめられていながらそれが十分生かされていないような残念さはあるが、あたたかい気持ちで終わるのはいい。 また同じ頃に出版されたもので『地獄の悪魔アスモデウス』がある。アスモデウスは悪魔の子としては、おとなしすぎる。そこで、魂をうばってくるようにと、地上に送り出される。「どうやって魂をくれそうな人を見つけたらいいの?」と聞くと、パパは「自分はえらいといばりくさっている人間、あるいは、バカでものごとをよく考えていない人間だ。さもなければ、悲しみにしずんでいる不幸な人間。こういうやつらは、だましやすい。」と答える。言われたとおりにさがしてみるが、うまくいかない。約束の時間まであと少しという時、「魂をあげてもいいわ。」という女の子が現れた。アスモデウスは、その女の子の願いごとをかなえてあげたあと、パパが待っている地獄の入り口へと二人で向かった。 おだやかな性格のアスモデウスにとって、地獄の暮らしは大変だろうなという思いになった。魔女や悪魔の世界にもいろいろな個性があるようだ。いくらでも不思議で広がりのもてる魔の世界を本の中でじゅうぶん楽しみたい。(徐 奈美) |
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