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きのう買ったものも、今日発売された新製品に比べれば古び、明日はもっと新しい商品が出るだろう。わたしたちのまわりで本当に必要なのは何なのかを見極めるのは、なかなかしんどい作業だ。 韓国の小説、『アダムが目覚めるとき』の主人公は19歳。浪人の彼が世間から手に入れたいと望んでいたのは、タイプライターとムンクの画集、古いラジカセにつなぐターンテーブル。この物語は、20歳になってタイプライターを買った彼が描く、19歳の自画像だ。 大学に受かった恋人にふられた彼が出会ったのは、60年代のロックとセックスにしか安らぎを求めることができない高校生のヒョンジェ。彼らにとってセックスも、自分を確認するためのエゴイスティックな充足でしかない。 〈ロックとセックスの青春ストーリー〉というと、世界中どこでも同じことしてるなぁ、と思いそうだが、まあ読んでみてほしい。これがずいぶん違ったトーンで、社会との関係が実に濃密なのだ。 作者は、日本と韓国の文化的な関係について「断絶とうちに連続を感じさせ、連続のうちに断絶を感じさせる」と書いている。いまの日本ではターンテーブルがCDになる分だけ、世界の加速度にブレーキをかけるのがむずかしいのかもしれない。(芹沢清実)
朝日新聞 ヤングアダルト招待席 92/05/17
テキストファイル化 妹尾良子
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