徳間のゴホン!

第12回
「姫さま見参!」

           
         
         
         
         
         
         
     
 お姫さまに憧れたことはありませんかきれいなドレスやおいしいごちそう、いうことを聞いてくれる召使い、夜毎の舞踏会・・・。きっときっと楽しいにちがいない。はてさて、ほんとうのところはどうなのでしょう?
 『のはらひめ』は、お姫さまに憧れていた女の子、まりのお話。ある時、おひめさま城からお迎えの馬車がやってきました。お城で出迎えたのは、きれいなドレスとたくさんの召使い。早速すてきなドレスを選んで「これで私もお姫さま」と思ったまりでしたが、そうは問屋がおろしません。お姫さまになるって、実は大変なことだったのです。お姫さま修業の始まり始まり〜。まず、お姫さまは賢くなくてはいけないと、いろんな国の人とお付き合いするために言葉を学んだり、その国の歴史や地理を教わったり。それにだれが嘘をついているのか 見極めなくてはなりません。お行儀よくご飯を食べることも大事です。まりは朝から晩まで一生懸命。修業の仕上げは怪物たちと戦うこと。なんと王子さまが遅刻したとき(!)には、お姫さま自身が剣を手に戦わなくてはならないのです。命がけの修業が終わって「のはらひめ」として、世界中のお姫さまの仲間入りを果たしたまりでしたが・・・。お姫さまの暮らしのディテールが丁寧に描かれた、美しい色彩のユーモラスな絵本です。
一方、『赤姫さまの冒険』は生まれも育ちも生粋(?)のお姫さまの赤姫さまが、十二歳の誕生日に盗賊にさらわれ、思いがけない旅に出る物語。なんとか盗賊の隠れ家から逃げ出したものの、「国の民」の誰一人として姫の言葉を信じてくれません。それどころか「わらわは、赤姫さまなのよ」「馬車を出して、おうちに、お城に帰りたい」と訴える赤姫さまを、嘘つき呼ばわりする輩まで現れますそれもそのはず、「国の民」は、赤姫さまの顔を一度たりとも見たことはなかったのです。なにしろ姫は、生まれたときからお城の外に出たことのない正真正銘の深窓のお育ちです。お城の外の世界は、見るもの、聞くもの、すべてが知らなかったことばかり。沢山の発見をして、お城に戻った姫は、もう以前の赤姫さまではありませんでした・・・。
 二冊とも強くて、たくましいお姫さまを描いた、ユーモアたっぷりのお話です。ぜひ一度、手にとってみてください。
 それにしても、こんなにお姫さまが強くなってしまったら、お相手をする王子は、なかなか大変なのでは?王子さまの物語も、読んでみたくなりました。<編集部・星野
「のはらひめ〜おひめさま城のひみつ〜」なかがわちひろ作・絵
「赤姫さまの冒険」パウル・ビーヘル作/フィール・ファール・デア・フェーン挿絵/野坂悦子訳
徳間書店 子どもの本だより2000/05.06
テキストファイル化日巻尚子