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著者は今までに、ファンタジィの手法で、あたたかな味をもつ幼年童話や、ソウルを題材にした高学年向きの童話など、多数の本を著しています。 自伝風の青春文学という、新たな一面を示したこの本は、著者の幅広い作品群の生まれた背景を物語るものとして、納得させるものがありました。 十八歳の少女が、結核療養所から巣立ち、アフタケアの私設で、検査技師の仕事を覚え、自立するまでの過程を、てらいもなく気負いもなく書きつづってあります。 大人である現在と、少女時代の過去を交互に語ることで、お話にふくらみをもたせてあります。 実社会と引き離された環境での主人公や、主人公をとりまく人々の、前向きな生き方が、たくさんのエピソードの中で魅力的に語られています。 また、自立し、実社会で働き始めてからの実感や、人間関係などもリアルで説得力があります。 それにしても、厳しい条件の中での、ひたむきな青春に、心をうたれます。 今も激動している世界のあちこちで、さまざまな若者が、さまざまな青春を送っています。 日本の若者のあなたは、どんな青春を送っていますか? 「まじめ」という言葉が「ダサイ」の一言で片づけられてしまうこのごろ、ぜひ、お薦めしたい一冊です。
(け)=静岡子どもの本を読む会
テキストファイル化武像聡子
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