アナグマと暮した少年

アラン・W・エッ力ー卜作
中村妙子訳 岩波書店

           
         
         
         
         
         
         
     
 厚めですが非常に読みやすく、わかリやすく(原文と翻訳がいいからだと思うよ)、それこそあっというまに読めてしまいますから、大人にも、本の好きな五、六年生にも、また毎晩読んでやるのにもむくでしょう。
 舞台は開拓時代のアメリカ……主人公は生まれっきシャイで敏感な坊やです。末っ子だったことや、男の子なのに男らしくないことで、父さんは無意識にこの子をいまいましく思ってます……仕事はハードだしね……で、彼はそれを敏感に悟っておひえてしまい、一切口をきかないの。
 動物のあとばっかリついて歩いて、ニワトリの鳴きまねばかりしてね。
 その子がある時ふいにいなくなり、そうなって初めて自分が彼を愛してたことに気づいた父親はそれこそ必死で探します。
 そうしてそれをきっかけにしてお父さんは自分の態度を反省するし、彼を愛していたお母さんも自分の意見をいえるようになるし、で風通しがよくなった半年後、草原のまんなかで彼は見つかるんです。生きてね。
 彼は子どもを亡くしたメスのアナグマに拾われ、養われていたんです。
 アナグマってのは可愛らしくみえるけど実は、獰猛な生き物なんだってね。
 で、そのメスのアナグマが、連れもどされる子に必死についてきて、撃ち殺されそうになった時に初めてその子が口を開くの。殺さないで! ってね。
 これは本当にあったお話だそうで、お父さんの態度が変わったことで、彼はそれから口もきけるようになり、人間社会に復帰したそうですけど、奇跡ってあるもんだね、です。動物ものの好きな人にはぜひ!(赤木かん子)
『かんこのミニミニ ヤング・アダルト入門 図書館員のカキノタネ パート2』
(リブリオ出版 1998/09/14)