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オーストリアのネストリンガーのシリアスものの代表作の一つです。 それまでの戦争をバックにした子どもの本では、戦争がどんなにひどくっらいものであるか、を強調するものが多かったわけですが、子どもと大人の皮膚感覚は違います。 大人にとってはこの先どうなるのだろうとか、食べ物をどうするか、などということか悩みになリますが、小さな子どもにとっては自分の友だちと、守ってくれる親が無事、であればほかのことはたいして気にならないものかもしれません。 この物語でネストリンガーは、爆撃されたガレキの山の中で遊ぶことや、めったに食べられなかった缶詰をあける嬉しさや、それまで金持ちでいばっていた家が壊れて、そこに入り込んで遊ぶ楽しさなど、五、六歳の女の子にとってはそれがどう映るか……を克明に描いてみせてくれました。 だからこそ、そういう子どもの視点から描ける児童文学が、大人にとっては目からウロコ……になりうるのですから-。 だからといって戦争に賛成しているわけではなく、かえってその無邪気さが悲惨さをきわだたせているんだけどね。 でもこれを子どもが読むかといえば…う-む、だな。かなり文学的にもレべルが高いので、子どもが読みこなすのは難しいかもしれません。 そのかわり、ネストリンガーのドタバタコメディーを好かない大人たちにもこの本は評判がいいようです。(赤木かん子)
『かんこのミニミニ ヤング・アダルト入門 図書館員のカキノタネ パート2』
(リブリオ出版 1998/09/14) |
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