あるはれたひに

木村裕一作/あべ弘士絵

講談社 1996

           
         
         
         
         
         
         
         
    
 表紙いっぱいに、目を金色に光らせたオオカミの顔のアップ。これがなかなかの迫力だ。どんな物語が展開するのか、期待感が膨らむ。
 この作品は、話題になった『あらしのよるに』の続編なのだ。嵐の夜に、真っ暗な小屋の中で、オオカミとヤギが出会う。お互いに相手の姿が見えないままにすっかり仲良くなって、翌日一緒にお昼ごはんを食べる約束をする。オオカミにとって、ヤギは大好物の食べ物だ。この両者が明るいところで顔を合わせたらどうなるか。
 初めての読者のために、前夜の出来事を二匹の会話で上手に挟み込みながら、オオカミとヤギはお昼を食べる約束をした山の頂上に向かう。ところが崖にさしかかったところで、オオカミはおべんとうを谷に落としてしまう。目の前を大好物のヤギが、柔らかそうな尻尾を振りながら歩いていく。人一倍食いしんぼうなのに弁当を失い、すっかり腹をすかせたオオカミの前に、友達とはいえ全く無防備なヤギがいる。この状況設定はスリリングであり、ユーモラスなのだが、両者のモノローグを挟んだ会話が、一種の心理ドラマのようになって緊迫感を盛り上げる。そこにまた雷雨が襲い、二匹は洞窟に逃げ込むのだが、突然、ヤギの悲鳴とオオカミの怪しげなうめき声が。前作以上に緻密に構成された好作品である。(野上暁)
産経新聞 1996/08/23