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帯には「ピュアな少女小説」。いいコピーですね。けれど、そのタイトルが、「アルマジロのしっぽ」ってのが、まずおもしろい。 米軍基地岩国に生きる少女の描いて、鮮烈な(凡庸な表現ですが、じっさい鮮烈でした)デビューを飾った岩瀬は、その後も主に少女を主人公に、その内面の微細な揺れ、外部(他者・含む親)との関係の相克、を次々と描いてきました。ドラマチックであるよりむしろ、生々しい日常感覚を伝える書き手です。 今回の物語もそうで、ストーリーを御伝えするのは、とても難しい。 主人公夏は、両親と妹の4人家族。ごく普通の家庭。近所に父方のおばあちゃんが一人暮らしをしています。というか、おばあちゃんの近くに家を建てたのですね。老後のこともあるから。ただいまは週2回、母親が作った夕食を、夏がおばあちゃんに届けています。そのたびにおばあちゃんは百円くれるけれど、これは二人の秘密。物語は、死んだ犬のこと、友人との会話、おばあちゃんとの交流、母親とおばあちゃんの微妙な関係ナドナド、いかにもありそうな日常場面がリアルに、描かれていきます。 妹の名前は雪。彼女と夏は10ヶ月しか年が違わず、同じ学年です。これは絶対にないわけではありませんが(事実、11ヶ月違いですが、生まれ月の関係でかろうじて、学年の違う姉妹を私は知ってます)、珍しい設定ですから、ここに物語のツボがあるでしょう。ほとんど歳の差がない二人はよく双子に間違えられるし、しかも雪のほうが身体が大きい。夏は自分が雪のミニチュアのようにも感じています。 この辺りの姉夏の気持ちの描きかたは、さすが岩瀬、うまい。 「私」をめぐる物語です。(ひこ・田中)
メールマガジン児童文学評論1998/02/07
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