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近未来の西新宿は、科学技術も発達した未来都市。今よりも環境破壊が深刻になり、異常繁殖している生物のために不気味な森が出現。春休みに母親と過ごすために啓と周は西新宿のセンチュリーホテルにやって来た。啓は成績優秀で研究者として期待される。周はいろいろな玩具を集めるのが大好きな男の子。その大好きな玩具のクマムシロボットを不気味に成長した森「新しい森」に落とし、そのクマムシロボットを探しに森へ入り込む。 ナツカは、第一鳥類復元研究所の所長で今回三年ぶりに西新宿の研究所に戻ってきた。所員の吉田に不審をもち研究の成果を確認するために帰ってきたのだが、奇妙な生き物を見つけ所員の吉田とともに「新しい森」に入り込む。その森の中で、啓と周とナツカと吉田は異常発生したゴキブリに遭遇したり、進化したクマムシに襲われたりと異様な体験をする。 昨今環境破壊が問題となっているが、この問題を先送りにしていると未来にどんなことがおこるか仮想して書かれている。SF物としては物足りなく感じるが、こんな事もあるかもねという範囲で読んでいける。 作者は、生物の先生らしい物の見方で、分かりやすく生物の生態を描いています。クマムシは、体長0・5ミリで絶対零度にした後ふつうの温度に戻しても生き、真空の中に入れてから元に戻しても動き出すなど、どんなに過酷な環境のもとでも生息しているのです。自然界の大きな力の中では科学の力なんてちっぽけなものかなと顕微鏡を覗きながら構想が膨らんでいるようです。前作の「やわらかな記号」もナメクジを題材にしています。発想と着眼点が今までの作家と少し変わっていて、これからの作品が期待されます。(山田 千都留)
読書会てつぼう:発行 1999/01/28
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