あたしだって友だちがほしい

リン・ホール 
岡本浜江・訳
文研出版

           
         
         
         
         
         
         
     
 このごろよく「自我があるとか、ないって、どういうこと?」 ってきかれるんだけど、正直いって私も、どう説明していいかわからない。ただひとついえるのは、頭がいい、悪い、とか、テストの成績がいいから自我があるってことにはならないよつていうこと!
 だって『あたしだって友だちがほしい』の女主人公、十六歳のドリーは、のろまなんだから。
 のろまというのは彼女自身のセリフで、私は知恵おくれじゃない、でも、フッーの子よりはのろまなんだっていうのね。
 イギリスの片田舎の貧しい家庭で、お母さんはアル中で、だれも面倒をみてくれないなかで彼女はそれでも自分の頭をはたらかせて、母親みたいには絶対なりたくない、でも自分はのろまだし……ウエートレスならできるかもしれない、と順々に考え、ウェートレスが主人公になっているテレビのドラマを、それこそ必死になって見ている。特殊学級に入れられればそこでは優等生だけど、それじゃ先ゆき望みはないと思い、ついてゆけないかもしれない、とおびえながらも、普通校へ行くことを願う子です。そしてそのために大事件を起こしてしまう。
 はっきりいって、自我の強い主人公が出てくる本は、日本ではウケませんが、これはサスぺンス仕立てでぐいぐい読めます。(赤木かん子)
『赤木かん子のヤングアダルト・ブックガイド』(レターボックス社 1993/03/10)

朝日新聞1988/05/01