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最近はあまり耳にしなくなったが、子どもどうしで、からかったり、やじったり、はやしたてたりするときの歌があった。「かっちゃん、カズノコ、ニシンの子…」とか、「みっちゃん、みちみち、うんこして…」などが、代表的なものだ。相手の名前を読み込んで歌にするのだ。からかわれる方は嫌なものだが、それも子ども社会での、一種のコミュニケーションとして機能していたのだろう。 この本は、そのスタイルを生かした、“たべものあいうえお絵本”である。「あっちゃん あがつく あいすくりーむ」「いっちゃん いがつく いちごじゃむ」「うっちゃん うがつく うめぼし すっぱい」というように、食べ物をテーマに、“あ”から“ん”までを歌い込む。 左ページに歌を、右ぺージには、歌に合わせて、擬人化された食べ物が、様々な仕種で動き回る。“あ”では、目鼻や手足のついた、色々なアイスクリームが踊り、“い”では、イチゴジャムの入った瓶が、食パンにジャムを塗っている。擬人化された食べ物キャラクターのそれぞれが、じつにユーモラスで楽しい。歌の周囲には、ユニークな食べ物たちが、縄跳びをしたり、“ダルマさんが転んだ”に興じたり、水鉄砲で遊んだり。それだけでも子どもは大喜び。ていねいに描き込まれた絵のそれぞれから、親子の会話がはずんできそうだ。じつにお得な絵本である。(野上暁) 産経新聞2001年04月24日 |
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