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この本をめくるとまず、ずらり八つの顔が並んでいる。八人の日本人画家による人の顔の絵だ。版画も日本画も油彩もある。どれもが人の顔でありながら、その描かれ方のなんと違うことだろう。そんなことを考えながら次のページをめくると、これが「プロローグ・・『顔』」 「美術の世界では、人間を表現する場合、『顔』そのものに大きなウエートがおかれてきました……顔のかたちや表情の変化のおもしろさが画家の関心をひく場合もあれば、目でみることのできない人間の心を表している場合もありますが、いずれにせよ、私たちが考えている以上に『顔』は、美術の主要なモチーフになっています」 なんともうまい構成だ。 プロローグのあと、「絵は、それを組み立てているものと、それが伝えるものとによって成り立っている」という立場に立って、「絵を組み立てているもの」「絵の中の遠近と明暗」「絵のつたえるもの」「学ぶ・つくる」の四章が続いている。 解説は詳しく、たとえば遠近表現にしても「大小による遠近表現」「重なりによる遠近表現」「空気遠近表現」「肌の遠近」「上下による遠近」「曲線による遠近」「透視図法」にわかれていて、なかなか専門的なのだが、例にひかれている絵と簡潔な説明がうまくかみあっていて、とてもわかりやすい。(金原瑞人)
朝日新聞 ヤングアダルト招待席89/12/17
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