英日翻訳トレーニング・マニュアル1・2

片岡しのぶ・金利光

バベルプレス 1989


           
         
         
         
         
         
         
     
 'I am a boy' は「わたしは少年です」と訳していいのだろうか。言葉はなにか目的があって発せられるはずだが、「わたしは少年です」という日本語(?)は、いたいなにをいいたいのだろう。だいたい、男の子が自分をさして「わたしは少年です」などというわけがない。意味不明の日本語に移して平気な顔をしているということは、原文の意味がわかっていないということなのではないだろうか。日本語とも思えない日本語がまかり通っている日本の英語教育はどこかおかしい。
 今回紹介する『英日翻訳トレーニング・マニュアル』は受験参考書ではないが、これほど英文和訳の参考になる本も少ないと思う。「こう訳せ」ということは「こう読め」ということなのだ。「訳例・バードさんはマーマレードに対するパディントンの好みをいつもののしっていました。だが、彼女が緊急の場合に備え、食糧品室に余分のひとびんをいつも置いているのはだれもが知っていました」↓「改訳・バードさんはパディントンがあんまりマーマレードを食べるといって、いつもくちやかましくいうのですが、そのくせマーマレードが切れた時のことを心配し、いつも食糧品室にひとびん余分に用意していたのです」 さて、'I am a boy.' はどう訳しましょう。(金原瑞人

朝日新聞 ヤングアダルト招待席89/11/19