選ばなかった冒険

岡田淳

偕成社 1997


           
         
         
         
         
         
         
         
         
         
         
     
 複数のメンバーがテーブルに集い、マスター役となった者が個々の役割を振り分け、物語の始まりを提供し、そこから皆で自由に展開していくというRPGをコンピューター上で試みたものをTVに置き換えたのがTVゲーム版RPG。
 つまり個々のメンバーの代りをコンピュターにしてもらい一人でも遊べる。そうしたTVゲーム版がRPGの故郷アメリカではそれほど流行らず、日本でもっとも支持されているジャンルとなったことに、この国の子ども事情が少し見える。
 この物語、「光の石の伝説」なるRPGの中に迷い込んだ二人の子どもを描く。RPGは「指輪物語」をルーツにしているためか、多くは冒険物語。「光」もそうである。従って主人公たちはその冒険をそのまま生きるかと思えばさにあらず。眠るごとに現実とRPGを行き来してしまう二人は、RPG世界のルール、例えば登場する生き物たちにあるのは役割だけで記憶がないことなどに現実世界の住人の感覚から違和感を持つ。
 それだけなら、それ自身TVゲームである「イデアの日」(相原コージ94)がすでに指摘していること。この物語のおもしろさは、現実世界もまた役割だけで記憶がないのではと考えて行くところやね。
 TVゲーム版RPGがこの国で支持される理由の一つはそれであろうから。
ひこ・田中