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これは、核、環境破壊からファーストフード、リカちゃん人形まで広い分野にわたる様々な問題を、左翼の立場から的確に捉えて批判した面白いエッセイ集だ。序文は「私有財産がなくなれば・・/そんなイメージ君にできるかな/人間はみな兄弟で欲ばりも飢えもなくなる」という、おなじみのジョン・レノンの歌から始まり、「マルクスはたしかにいま面白いのである。レディーメイドの解答を期待するのでなく、われわれ自身の問題関心への思想と理論にわたる一種の方法論としてマルクスを読んでみよう。レノンの歌のすなおな願いを夢のまた夢としない道への出口を探るためにも」と結ばれる。 そして浜林正夫の『古典から学ぶ史的唯物論』(学習の友社・一〇〇〇円)はマルクスを読むための格好の入門書である。これは「史的唯物論の『定式』」「史的唯物論の成立」「史的唯物論の諸概念」「現代の思想状況と史的唯物論の今日的意義」の四章にわかれており、マルクスを中心にエンゲルス、レーニンなどの史的唯物論に関する著作からのポイントとなる部分の抜粋と、それについての解説からなっている。コンパクトでよくまとまっているし、それぞれの解説もていねいでわかりやすい。 なんたって世界の半分は社会主義、共産主義国家だ。マルクスを知らずに現代を理解するのは不可能といっていい。(金原瑞人)
朝日新聞 ヤングアダルト招待席 1989/01/29
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