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イチゴと言えば、一般的には、果物屋さんで買うもの、と思っていらっしゃる方もいるかもしれませんが、道ばたに宝石のように輝く赤い実や黄色い実にも、イチゴの仲間がたくさんあります。気をつけていると、住宅地の近くの空き地や、道ばたにも、意外にたくさん、イチゴの仲間は生えているものです。 そろそろアウトドアのシーズンでもあり、みなさんも自然の中で過ごすチャンスが多くなってくると思うのですが、野山に輝くイチゴを見つけた時には、どんなに歩きつかれていても、思わず駆け寄りたくなるもの。そのまま口に人れると、疲れた身体に野生のビ夕ミンがしみわたるような気がします。たくさんなっていたら、つんでジャムにするのもよし、ジュースにするのもおいしいもの。 実を見つけると、思わず手をのばして、そのまま口に放りこみたくなるのは、大人も子どもも同じこと…でも、放りこむ前に、ちよっと待って。同じ赤や黄色い実でも、毒のあるものもあるのです。 (イチゴの仲間にはないと思いますが。)食べておいしくても、そのまま、うんうんうなって病院行きなんていうことになったら、大変です。それから、食べられると分かっている実でも、注意してみると、色々な種類があるもの。「これ、なんていう名前?」と子どもに聞かれて、ぐっと答えにつまったことのある方も多いのでは? さて、そんな時に、親子でぜひとも開いて欲しいのが「イチゴは ともだち」です。 植物図鑑を開いて、写真を見たり説明文を読みながら、名前あてをするのも楽しいものですが、この本のいいところ(そして面白いところ)は、まるまる一冊イチゴに関することが、つまっているところ。本格的な図鑑をひもとく前に、この本を熟読して、イチゴ博士になってみてはいかがでしようか。本の題の下に、副題として「みつける・たべる・そだてる」とあるように、イチゴのことが多面的に載っています。木になるイチゴや、草になるイチゴ、今まで知らなかったイチゴの新しい顔が見えてくるような気がします。しかも、主人公たちが、今や次第に一般的になってきたイン夕ーネットを通じて、イチゴ情報を集めるところなど、実際にやってみたくなるほどです。 日本は南北にかなり長い国なので、イチゴの季節も地域によって様々です。また、その地域にしか生えないイチゴもあります。その紹介を見ていると、いつかこれらの実たちに出会ってみたいものだと、思うほど。 姉妹編として、「木の実とともだち」という絵本もあり、こちらは、クリやヤマブドウなどの食べられる実ばかりではなく、食べられないものや毒の実なども紹介されています。あわせて、揃えてみては、いかがですか? 両方とも隅々まで丁寧に作られた、楽しい絵本です。(米田佳代子)
徳間書店 子どもの本だより 1998/07.08
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