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ファミコンに夢中になってしまって学校に行く気がなくなってしまう学生というのはなんとも現代的な現象なんだけど、ここで問題なのは相手がファミコンという「物」にすぎないのに、そういった「物」との関係のほうが現実よりも大きなものになっていくことだろう。こういった問題を小比木啓吾が、あざやかに分析してくれた。 「一・五の関係」というのは、ペットやファミコンやテレビなどを「半人間的」なもののように感じながらのかかわり、つまり「一+〇・五」の関係だ。これはその人の心のなかで形作られる「虚」の世界で、こういった関係を楽しむのはある意味でとても人間的なことなのだが、「虚」の世界に閉じこもってしまって現実の世界に適応できなくなると、さっきのファミコン少年になってしまう。 また、いじめはその逆の例で、いじめをしている子どもは、相手を現実の人間と認識していないと作者は指摘している。これは相手が人間、つまり「一」の存在なのに、それを「〇・五」としか認識していないわけで、これも「一・五の関係」である。そして、これは戦争時の兵士の心理でもある。 作者はこういった問題からマスメディアの抱える問題まで、「一・五」をキーワードにして、とてもわかりやすく分析してくれている。現代を考えるうえで、ぜひ一度読んでおきたい一冊である。(金原瑞人) 朝日新聞 ヤングアダルト招待席 1988/03/20 |
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