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むかしむかし、といっても1960年代と70年代の頃ね、ジョン・バーニンガムは『ガンピーさんのふなあそび』とか『おじいちゃん』とか、とっても穏やかでのんびりした、それでいて読みおわるとほっと豊かになる、そういう絵本を描いていました。もちろん子どもたちはバーニンガムの絵本が大好きだったし、バーニンガムは徹底的に、いつだって、子どもたちの本当の友だちで見方でした。 それが、いつからだろうね、すっごく皮肉で過激な本ばっかり描くようになったのは―。 たとえばこの『いつもちこくの――』なんてね、いつも学校にちこくしてくる子がいて、なぜかというと「ライオンが出たから……」とか「ワニがいて……」なのね。 そうすると、それをきいた学校の先生がすっごく怒る。ところがラスト、学校に巨大なゴリラが出て先生が捕まっちゃうの。で、なんとかしろって先生が叫ぶと、彼はすました顔をして「そんなバカなこと、あるわけないじゃありませんか」という先生お得意のセリフを吐いて、ゆうゆうと立ち去っていくのよ、次のところへ勉強をしに―。 ひえええ〜、でしょ?あの穏やかなバーニンガムが! でも、徹底的に子どもの見方、ってとこは全然、みじんも揺らいでないけれど―。 彼、よっぽど怒ってるんだね、いまの子どもがおかれている状況に―。だからいま、バーニンガムの絵本を読むと、元気になります。高校生だって、大人だって元気になります。 やっぱり最高よ、昔と同じに―。 こういう本を子どもたちにちゃんと渡せるかどうか……大人たちの出番だと、私は 思います。(赤木かん子)
『絵本・子どもの本 総解説』(第四版 自由国民社 2000)
テキストファイル化藤井みさ |
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