おばあちゃんかいるから

イルズ=マーグレッ卜・ボーゲル:作掛川恭子:訳
岩波書店

           
         
         
         
         
         
         
     
 ボーゲルは、幼年文学の中でも、いわゆる〃純文学〃タイプを書く人です。
 見るからに繊細でナイーブで、内面的で、ひと口に言えば高尚なのです。
 したがって、子どもの本の好きな大人たちは「素晴らしい!」と絶賛するでしょうか、ふつうの子どもたちにはまずウケないでしょう。
 もちろん数ある子どもの中には、心からクラシックが好き、という子だっているでしょうが、大多数の子どもは「鬼のパンツ」の大合唱のほうが好みだと思います。
 もちろん両方ともこよなく愛する人もいます。
 どっちも尊重されなくてはなりません。
 そういうボーゲルの中で、これは比較的大勢の子どもにウケるかな、というのかこの『おばあちゃんがいるから』-今日は理由はわからないけどなぜか悲しいの、というようなナイーブな小さな女の子と、それを怒りもせずに片腕てだっこしなから、無理な姿勢のままリンゴの皮をむいてくれる(そのリンゴはアップルパイになるんだけど)完全な大人…包容力、観察力、洞察力バッグンのおばあちゃんとの、事件ともいえない小さな出来事をつづった短編集です。
 でも、おそらく読んでもらわないとムリ…・五、六歳からいいでしょう。
 子どもには複雑な感情はわからない、というのはウソですから……でも自力で読んで凄い!と思うのは、やはり中学・高校生、大人でしょう。(赤木かん子)
『かんこのミニミニ ヤング・アダルト入門 図書館員のカキノタネ パート1』
(リブリオ出版 1997/09/20)