おばあちゃんのすてきなおくりもの・@

カーラ・スティーブンズ/文 イブ・ライス/絵
掛川恭子/訳 のら書店

           
         
         
         
         
         
         
     
 スーザン・バーレイの『わすれられないおくりもの』という絵本が出た時、見たとたん、どーんと気持ちが沈んで……二、三日、私は鬱でした。
 ポター調の、可愛らしい動物たちが主人公の絵本で、死んでしまったあなぐまさんのことをみんなで思い起こして、初めて彼がどれだけのものを残してくれたか思い知る……というようなストーリーで、見たとたん、ああ、こいつは売れるなァ……って思ったもん。
 案の定、売れてるけどね……。
 絵だってそんなに悪くないし、別にいいんだけど、でもやっぱリどう考えたってあの絵本はインチキよね、インチキというより偽善だなァ……。というと、えっ、どうして!? どこがどういうふうに悪いの!? とパニック起こす人もいるかもしれないけど……。
 わたしとしては、そうよねえ!? といっていただきたいとこですが-。
 でも、もしあなたが本のプロ、たとえば図書館員だったとしたら、あのテの本に編されちゃいけねえ…だよ。
 わかってて図書館にならべるのはいっこうにかまわないけどさ。わかってればこの本入れるときは他の本も入れて、棚のバランスをうまくとるだろうからね。
 あ〜あ、でもこういうのがウケるんだよね、日本って-と暗くなってたら、へっへっへっへっ、捨てる神あれば拾う神あリでいい本を見つけました。
 カーラ・スティーブンズの『おばあちゃんのすてきなおくりもの』です。
 ストーリーは、もぐらとトガリネズミと、なんだっけ……あ、そうそうハッカネズミね、三人の若者が(そう、全員男の子です。なぜか・・・)、遊びでパッチワークのおふとんを作るの。
で、できあがったあとどうしようかって考えて、近所のとても高齢で、ほとんど寝たきリのハタネズミのおばあさんにあげようってことになるの。
 で、おばあちゃんはそりゃとっても喜んでくれる。
 でも、喜びすぎない。ここが凄いとこよね。でもってこの訪ねてきてくれた若者たちに、甘えたりこびたりすがったりしないの。
 で、この三人はおばあちゃんの人柄に魅かれて、そのあともたびたび来るようになる……。
 はた目には若い人たちがこの老人の面倒をみてるように映るかもしれないけど、本当はこの三人のほうが甘えて、おばあちゃんに世話になってるんだよね〜。
 このおばあちゃんの、なんていうか、決して甘ったれない精神的な立ちかた? っていうのに驚嘆しちゃうんだよ。
 こういうのを、本当の意味で自立してるっていうんだろな〜って思うよ。大人の本が一生懸命このこといおうと努力しているってのに、この子どもの本はやすやすとそれをやってのけるの。表紙も厚さもさし絵だって小学校低学年〜って顔してるのによ。
 でね、この本は売れないと思います。のら書店さん、売れてないでしょおおっ!!と力むこともないですが、売れてないんじゃないかな。だって、正真正銘、ホントのことが書いてあって、とってもとってもシビアな本なんだもん。
 そりゃ、にせものをそうと知って承知して使うこともできるけど、にせもののダイヤを本物だと思いこんでつけてたら……ちょっとオマヌケ……だと私は思うんだけどなァ。
 ともあれ、愛すべき、かつ尊敬すべきハタネズミのおばあちゃんのおかげで、私は気分がよくなりました。
 すべての女性のモデルとなれる女性だと思います、このハタネズミは-。(赤木かん子)
『絵本・子どもの本 総解説』(第二版 自由国民社 1997/01/20)