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IT革命により、「本」という形態が変容していくのではと、危惧する人々がいるが、そんな心配は吹き飛んでしまう。他の何ものでも表現することのできない、絵本ならではの濃密な情感が、読み手を心地よく揺さぶる。“絵本というメディア”の、独自に卓越した表現世界がここにはあるのだ。 少女は、おばさんのおみまいにと、誰もいない道端の垣根に咲いていた、一輪のバラを折る。それをネコが見ている。目玉模様の飛行船や、目の形をした熱気球が、ネコの視線を強調するかのように空に浮かんでいる。「ネコさん ネコさん このバラ とったこと だれにも いわないで」というのに、ネコはだまっている。それで少女は、「おまえも おみまいにしてしまうよ」と、女の子の背丈ほどの大きさに強調された赤いバラをかつぎ、ネコの首をつかんで、おばさんの家に行く。少女とネコは、さんざん遊んで、すっかり仲良しになる。おばさんにもらった、きらきら光るきれいなビーズで、ネコには首輪、少女は腕輪を作って、さよならする。 微妙にうつろう少女の心象を現すかのような、場面ごとに変わるパステルカラーの淡い色合いの美しさ。少女のジャンパースカートに描かれた、さまざまに姿を変えるユーモラスで不思議なペンギン。最終場面のスカートから抜け出したペンギンとネコの出会いも意味深長だ。幼児から大人まで楽しめる、洒落た絵本である。(野上暁) 産経新聞2001.05.29 |
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