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ごく普通の日本の青年が、ごく普通の開発途上国の人々と出会う。その体験記がとても楽しかった。これは、十四人の青年海外協力隊員の手記を集めたものだが、どれも興味深く、泣いたり笑ったりしているうちに読み終えてしまった。 部族抗争で村が焼かれるという事件が頻発するニューギニアの危険地帯で鶏舎兼教室を建てることになった木川君。ケニアで教師をしていたところ、前任者から「転任するから、明日から君が校長だ」といわれて、授業料集めに四苦八苦する池田君。どんな寒い日でもバケツ一杯の水で体を洗わなくてはならないというパラグアイで、メスの代わりにカミソリを、包帯の代わりに古くなったシャツを使いながら、現地の人たちの治療にはげむ渡辺さん。ここでは紹介しきれないが、ほかの人たちもみんな、先進国と開発途上国とのさまざまなギャップに悩み、考え、多くのことを学んでいく。 ここには、いわゆる美談とはちがった、経験した者ならではの迫力とリアリティがある。この行動力、この気力! 日本の若者も捨てたものではない。とにかく元気の出る本だ。 そして途上国の人たちの、「あわてず急がずのんびりと」という日常のペースも、たいしたもの。そのうち、あちらからも青年協力隊がやってきて、そのコツを教えてくれないだろうか。(金原瑞人)
朝日新聞 ヤングアダルト招待席90/04/29
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