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これを見つけた時、つくづく絵本も変わったな、と思いました。変わったというより新しいジャンルを確立したなってカンジかなァ……。 主人公のオオカミくんはまだ子どもで、うさぎを見たことがありません。で、大おじさんに連れられてうさぎ狩りに行く途中、大おじさんは頭を岩にぶっけて死んじゃうの。親じゃなくて育ててるのが大おじさん、という設定がまず凄いでしょ。おまけに即、死んじゃうのよ。で、その時一番身近にいて助けてくれたのがうさぎのトムで、二人は親友になります。 でね、二人はときどきオオカミが恐いごっことか、うさぎが恐いごっこをして遊んだんですが、オオカミくんは本当はちっともうさぎなんて怖くなかったの。でもうさぎのトムのほうはね、本当は死ぬほどオオカミが恐かったんですよ。 で、ストレスのあまり、ある日トムはプッッンしてしまいます。穴から出てこなくなっちゃうの。オオカミくんはとうとうあきらめて、仲間のいるオオカミ山へ出かけます。ところがそこでうさぎにまちがえられてオオカミたちに追いかけられてね、生まれて初めてオオカミくんは、オオカミに追いかけられるのを恐い……って思ったのさ。で、トムの穴にもどってね、オオカミが恐いごっこはもう決して決してしないから……やっとわかったから……っていうんだよ。全国すべての小、中、高校のクラスで読んであげて欲しい、と思いません? 幼稚園から高校まで、オオカミが恐いごっこにおびえてるヤツっていっぱい、いるんだもの。 それをまた、おもしろがって、ついついゃっちゃうヤツだって-。 そういうことを、こーんなに上等な本にできるなんて、ホント、うらやましいよね〜。(赤木かん子)
『絵本・子どもの本 総解説』(第二版 自由国民社 1997/01/20)
テキストファイル化岡田和子
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