狼とくらした少女ジュリー

ジーン・クレイグヘッド・ジョージ作
西郷容子訳 徳間書店

           
         
         
         
         
         
         
     
 これ、昔むかし、かなり大きな本で出た『極地の狼少女』……という本と同じだと思います。
 ただし、昔のは相当カットしてあったようです、この本を見ると-。
 こちらは、もちろん完訳でしょう。
 舞台はアラスカ……。
 主人公の少女はアラスカのエスキモー(イヌイット)です。
 両親がいるあいだはよかったんですが、あいついで死んでしまうと、彼女は結婚させられてしまい(十三歳で!)、相手の男(少年だけどさ)がイヤでたまらない彼女はとうとう家出してしまうのです。
 白人の文化がかなり入り込んできている……でも、まだ少しは昔のやり方を彼女は見覚えている、という時代の物語です。
 そうして、不幸なことに、彼女は迷子になったの! 方向のわからない氷原のまんなかで!
 食料がなくなった彼女は、昔父さんが、やっぱり食料がなくなった時に、狼のリーダーに食べ物が欲しいんだ、と訴えたら、カリブー一頭をとってくれた……という話をしてくれたのを思い出し、必死になってまわりの狼たちを観察し、目や耳や尻尾や泣き声を学習するのよ!
 このアイデアそのものに、目が点! ですが、エスキモーの人たちにとって狼は人と変わらないそうだし、実際に話ができる……そうです。
 『極北の犬トヨン』と同じくもの凄く寒くていっも死と隣りあわせ、にもかかわらず、力強さとまっとうさと温かさに満ちた物語です。(赤木かん子)
『かんこのミニミニ ヤング・アダルト入門 図書館員のカキノタネ パート2』
(リブリオ出版 1998/09/14)