徳間のゴホン!

第31回「王様もいろいろ」

           
         
         
         
         
         
         
    
 子どもの本やお話には王様の出てくるものがいっぱいあります。裸の王様、王様の耳はロバの耳、かえるの王様、クルミわりとネズミの王さま、岩窟王、ぼくは王さま、ムギと王さま、王さまと九人のきょうだい…数え切れないほど。さて、徳間の児童書に登場する王様たちは?
『王さまとかじや』の王さまは、御歳八歳、偉いホレイショ王と呼ばれ、家来や大臣もたくさんいます。多すぎて困るくらいです。ある日カラスに王冠を取られ、事態は一刻を争うというのに、大臣たちはあまりに四角四面で融通がききません。とうとう怒った王さまは、町の鍛冶屋を呼んで、王冠を無事取り戻してもらいます。ところが、鍛冶屋に褒美を取らそうとすると大臣たちが…?
 正しいことをするのが難しいのは王様も同じです。頑張れ王さま!
 さて次の王様は、ちゃんとした家来を抱え、さぞ安泰かと思えば、王様本人が困り者。『なまけものの王さまとかしこい王女のお話』の王さまナニモセン五世は、丸々と太っていて、歩くのも、布団から出るのもひと苦労、ちょっと仕事をすればすぐひと休み。そんな王さまを心配するのは元気で賢い一人娘ピンピ。大好きなお父さんの怠け癖を直すために、外へ連れ出そうと頑張りますが、王さまはまるでやる気なし。やがて、王さまは病気になり…。
 ピンピと、森に住む少年のおかげで、すっかり健康になった上に、立派な王に更生したナニモセン五世。娘に苦労させないようにね!
 さて次は、血筋は王でないけれど「王」と呼ばれる人物。『チョコレート王と黒い手のカイ』に登場するのは、チョコレート会社で大成功した社長。自分の名前がついた町に、自社のチョコレートエ場がずらりと並ぶというのですからすごい! その社長が、ヨーロッパに進出しようと、各都市で広告を打ってくれる広告王を探しにやってきました。そして切れ者の少年カイがいる下町の少年たちの「黒い手団」と広告代理店社長が広告王の座を争って広告合戦を繰り広げ、少年たちが大人を出し抜く痛快な物語。チョコレート王から、広告王に選ばれた少年たちの誇らしい気持ちが伝わります。
 最後に動物の王様です。『ゾウの王パパ・テンボ』のパパ・テンボと呼ばれる巨大な一頭の象は王と呼ぶにふさわしい威厳を備えた神秘的な象です。どこかで群れが人間に襲われた気配を感じると、その巨体に似つかわしくない軽やかな足どりで駆けつけるサバンナの勇者。その姿を一目見た人間は、その場の空気を圧倒的に支配してしまうパパ・テンボに畏怖の念を覚えます。
 王というからにはこうでなくちゃ。ま、人間味あふれる王様たちも私は好きですよ、とってもね!(筒井)

絵本
『王さまとかじや』ジェイコブ・ブランク文/ルイス・スロボドキン絵/八木田宜子訳
児童文学
『なまけものの王さまとかしこい王女のお話』ミラ・ローべ作/ズージ・ヴァイゲル絵/佐々木田鶴子訳
『チョコレート王と黒い手のカイ』ヴォルフ・ドゥリアン作/シャーロッテ・パノフスキー挿絵/石川素子訳
『ゾウの王パパ・テンボ』エリック・キャンベル作/さくまゆみこ訳/有明睦五郎挿絵

徳間書店「子どもの本だより」2003年9-10月号 より
テキスト化富田真珠子