オランダ兵士 長崎被爆記


レネ・シエーファー著
緒方靖夫訳 草土文化

           
         
         
         
         
         
         
     
 これはもうタイ卜ルどおり、まちがえようがないでしょう。
 オランダ人も捕まってた、ということも、その人たちがインドネシア、シンガポールを経て門司に連れてこられ、長崎で捕虜生活を送った……というわけで被爆した……ということもあまり有名でないと思いますが、オランダ人だけでなく、インドネシア人、イギリス人、アメリ力人、オ-ストラリア人などもいたそうです。
 そんでもってまあ無理もない、というか当然なんだけど、シェーファー氏は日本にきて初めて見たらしい、どなったりなぐったり、けったりする以外の日本人、笑う日本人や美しい家屋、色あざやかな着物を着た娘たちのことを驚きをもってしるしています。
 ということは……それまではどなったりけったり、なぐったリする日本人しか見たことなかったってことよね?
 そうしてこの収容所ではたった一年、一冬の間に五人が死に、そうしてその後、原爆が落とされたのです。彼の仲間もたくさん亡くなり、その後、原爆は戦争を終わらせるために必要だった、という説に驚いた彼は自分で調べ始め、戦後アメリカが世界の実権を握るために使われたのだ、という結論を出し、この本を書いたわけですが、本国オランダでは戦争の英雄も、日本への憎しみもない本は売れない、と出版を拒否されたそうです。
 オランダって反日感情が強いって知ってた?
 そんなに厚くなく読みやすいですが、いろいろな議論を呼ぶでしょう。
 図書館員は一度は読んでおいたほうがいいと思います。(赤木かん子)
『かんこのミニミニ ヤング・アダルト入門 図書館員のカキノタネ パート2』
(リブリオ出版 1998/09/14)