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あのチュルノブイリ原発事故から五年がたちました。 原発事故がほかの災害と決定的に違うのは、被害が将来にわたってどんな形で出てくるかわからない、という点です。昨年秋、ソ連のペロルシア共和国を訪問した日本の医師や科学者によるリポート『汚染地帯からの報告』(チュルノブイリ救援調査団編、リベルタ出版=03−3293−2923・1000円)を読んで、事故の怖さが身にしみました。 フレハブの検問所を通って調査団は廃墟となった農村に入っていきます。息詰まる緊張感。ペロルシア共和国では、ひどい汚染地域が事故当時のまま放置されていました。情報が制限されていたため、子供たちへのヨウ素剤の投与が手遅れになり、甲状せん障害が多発しています。ショッキングな事実が写真と文章で次々に報告されていきます。 住民の診察を行うにも、医療施設や薬品がまったく不足しているそうです。このため調査団は、訪問の先々で「日本から救援の手を」と訴えられます。そして、被害の全体像は五年後の今も明らかではありません。 「わが国の原発は安全」とされてきたソ連での事故。他人ごととは思えず、本文中の「汚染地域住民の心得」を熟読してしまいました。なお、この本の益金の一部は被災者救援カンパにあてられるそうです。(芹沢清実)
朝日新聞 ヤングアダルト招待席1991/5/05
テキストファイル化 妹尾良子
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