おたよりください

シャスティン・スンド

木村由利子訳 大日本図書 1991


           
         
         
         
         
         
         
         
    
 スウェーデンの女の子リンダは八歳。冬休みにたいくつしきっていたリンダは、新聞の文通欄に「ペンフレンドぼしゅうちゅう」とでていた同じ八歳のオルガに手紙を書きます。でも、オルガの返事はなにかおかしいのです。それもそのはず、広告文にはゼロがひとつおちてしまっていて、オルガは八O歳のおばあちゃんだったのです。
 さて、あなただったらオルガおばあちゃんと文通を続けますか。もちろん、続けますよね。リンダもオルガに自分のほんとうのおばあちゃんになってもらって、文通を続けます。
 好奇心いっぱいのリンダは、年をとるってどんなかんじか質問したり、ハムスターのこと、耳の手術のこと、夏休みに海にいったことなど、つぎからつぎにいろいろなことをおばあちゃんに書きます。足がいたくてあまり家からでられず、ひとり暮らしのオルガも、思いがけずできたかわいい孫に、せっせと返事をだします。手術をこわがるリンダをはげましたり、おみまいに大切な思い出のせともののお人形を贈ったり、ハムスターの名前をいっしょに考えたりするのです。
 また、オルガは、自分の思い出をリンダに語ります。給食もなく、生徒が全員ひとつの教室で勉強した学校のことや、けがをした兄さんのことなどです。なかでも、秋に一家ででかけたリンゴンベリーつみは生き生きと楽しく、リンダの一家もまねしてでかけたほどです。 二月にはじまったリンダとオルガの心のかよった文通は、クリスマスに最高の時をむかえます。リンダがこっそり会いにきて、オルガをびっくりさせるのです。 ぬけおちてしまった、たったひとつのゼロが、リンダにおばあちゃんを、オルガに孫を(それも家族ぐるみで)あたえてくれました。ユニークなゼロの発想と、気持ちを伝える手紙形式が効いています。日本でもひとり暮らしのお年寄りが増えている現在、こんな素敵な出会いがあったらいいと思いませんか。(森恵子)
図書新聞1992年2月29日