親指こぞうニルス・カールソン

リンドグレーン/作 イロン・ヴィークランド/絵
大塚勇三/訳 岩波書店 1981

           
         
         
         
         
         
         
     
 これは『長くつしたのピッピ』でおなじみのリンドグレーンの短編集です。タイトルのほかにもいくつもお話が入っていますが、私がこれが一番好き。
 両親が共働きで、お姉さんがいたのですが病気で死んでしまったベルテルは、一日一人ぽっちで過ごさなくちゃなりません。ところがね、ある日、小人が一人、ベルテルの家の地下に越してきたんです。そうしてもっと素敵なことには、キレビッペンって唱えれば、ベルテルも小さくなって、ニッセ(その小人のあだ名ね)の家へ遊びに行けるんですね〜。
 で、遊びに行ったニッセのうちには……なにもないの。家具もなし、火の気もなし、食べ物もなしでニッセは青い顔してふるえてるってわけ。
 ベルテルはもちろんもう一度大きくなって、たきぎはマッチの軸で、家具は人形の家のベッドやじゅうたんを、せっけんや食べ物はちょいとひとかけずつニッセのために集めて、それから二人は遊んで遊んで遊びまくるんですよ。二人でお風呂に入って、家中のそうじをして飾りつけをして、お腹いっぱい食べたり飲んだりして――。
 そのなかに、大きな肉だんごを(ふつうの肉だんごでも、ニッセのとこまで持ってけば、ニッセの頭より肉だんごの方が大きいんですからね)両端から二人で丸かじり、というのがありまして、子どもの時には一度やってみたいものだ、とつねづね思っておりました。
 このお話も、この後ろに入ってる『遊びたがらないお姫さま』や『ペーテルとペトラ』も、子どもにとって、なにが一番大事なことで、どうしたら幸福になれるのか、そうしてその幸福とはどんなものか、を描いてある作品ばかりです。一晩に一話ずつ、よんであげてください。(赤木かん子
『絵本・子どもの本 総解説』(第四版 自由国民社 2000)
テキストファイル化天川佳代子