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長い間いっしょに暮らした夫婦が、少しずつうまくいかなくなって別々に住み始める。そして、離婚。こういう場合によく言われることだけれども、「うまくいかない」まんま適当にやっていくのがいいのか、それともはっきり「離婚」する方がいいのかーー主にその夫婦の子供達たちにとって、ということだけど。 答はーーハイ、もうわかりますね。どちらかがどちらかより絶対に「いい」ということはないのです。例えば、この物語に出てくる小六の男の子は、親がもめてる時期にはすごく弟をいじめた。親が別れるとそれはやんだけど、こんどは兄弟そろって、離れて住む父親とギクシャクしだした。どちらも決っしてよくない。どちらも無理ないことではあっても。 それでも、上の子にはわかる。自分たち親子は「離婚」という未知の領域にいどむ「探険隊」なのだと。これは、そんな子供たちとたまに にくたい の話など交わしながら、誰も恨まずに生きようとする母親の物語。会話が絶品。(横川寿美子)
読売新聞 1987/02
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